2018 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類非オプシン型タンパク質による概日光受容メカニズムの解明
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18K14646
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
坪田 有沙 (平野有沙) 筑波大学, 医学医療系, 助教 (60806230)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 概日時計 / 光受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
概日時計や睡眠中枢に入力する光応答機構は視覚情報を伴わない非視覚光受容と呼ばれる。非視覚光受容の分子メカニズムを理解することは、概日リズム障害の発症機序の解明とその解決に不可欠である。本研究計画では、哺乳類の非オプシン型光感受性因子であるCRYの概日光応答における機能を再検証し、哺乳類における新規光応答メカニズムに分子レベルで迫ることを目的としている。 本研究では主にCry1の機能解析を部位特異的に行うため、Creリコンビナーゼを発現した細胞のみで機能欠損できるようにコンディショナルノックアウトマウスを用いることを計画している。当該年度ではまず、コンディショナルノックアウトマウス(Cry1 floxマウス)を作成した。機能ドメインを含むエキソンを挟むようにloxP配列を配置したターゲティングベクターを作成し、CRISPR-Cas9システムを用いてターゲット配列をマウスゲノムにノックインした。その結果、loxP配列を含むターゲット配列を持つ変異マウス系統が複数得られた。さらに我々は、培養細胞に光受容タンパク質とNFATプロモーターにドライブされるルシフェラーゼ遺伝子を発現させて光照射によって活性化するGタンパク質シグナリングをリアルタイムでモニタリングすることに成功した。この再構築系を用いて、CRYタンパク質が光受容シグナリングに及ぼす影響を調べたところ、CRYタンパク質の発現によってシグナリングが活性化する一方、機能阻害では光受容シグナリングの活性化が減弱することを見出した。このことより、生体内においてもCRYタンパク質が概日光受容に関与している可能性が高いと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、研究計画の柱となるCry1のコンディショナルノックアウトマウスの作成に成功しており、マウスのブリーディングもすぐに実験に使用できるように順調に進んでいる。さらに細胞レベルでの実験では、培養細胞を用いて光受容シグナリングをin vitroで再現し、そのシグナリングの活性化をルシフェラーゼを用いて可視化することに成功している。さらに、この再構築系を用いてCRYタンパク質の発現がGPCRの発現変動を介さずに活性を変化させることを見出しており、転写因子としての役割ではなくタンパク質レベルで光受容タンパク質と協調して働くという本研究の作業仮説が強く示唆された。2年次は1年目に得られたマウスと各種タンパク質を発現するウイルスベクターを組み合わせることにより、CRYタンパク質の光受容における役割を生体内で解析することを予定しており、今後研究が大きく進展すると考えられる。今年度は、研究代表者が産休を取得したため研究期間が約半年と限られており、そのことを考慮しても順調に研究が進んでいると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年次は、アデノ随伴ウイルス(AAV)を用いたマウス生体内での部位特異的なCryの機能阻害または過剰発現を行い、どの部位に発現しているCRYが光受容に必要なのかを明確にする。rd/rd変異を持つ近郊系マウス(C3Hマウス)をバックグラウンドに持つCry1 floxマウスを用い、網膜全体、Opn4発現細胞(Opn4-Creマウスを利用する)およびSCNにCreリコンビナーゼを発現するウイルスを導入する。効果の評価は行動リズムの光同調、急性睡眠誘導、瞳孔反射などを指標とする。これらの解析により、CRYの非視覚受容における新規機能を提示する。 さらに、培養細胞を用いた再構成系を用い、CRYによる光シグナリングに関与する機能ドメインを解明する。申請者はすでに培養細胞に発現させたCRYが光シグナリングを増強させることを見出している。そこで、CRYを介した光反応メカニズムを明らかにするために、光活性化に必要なドメインや機能(転写抑制活性や局在)を同定する。CRY分子の中でどの部位が光活性に必要なのかを明確にする。培養細胞を用いたin vitro再構成系で得られた結果を基に、rd/rd-CryDKOマウスに変異体CRYを発現させてその効果をin vivoでも検証する。これらの解析から、哺乳類の非オプシン型光感受性因子であるCRYの概日光応答における機能を再検証し、哺乳類における新規光応答メカニズムに分子レベルで迫る。
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Causes of Carryover |
研究代表者の産休育休取得により、研究期間が短くなったため1年次の予算を2年次にまわした。
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Research Products
(3 results)