2018 Fiscal Year Research-status Report
エピトランスクリプトミクス機構の解明 ‐新規癌分子機序の提唱を目指して‐
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18K14653
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長谷 拓明 大阪大学, 薬学研究科, 助教 (80779926)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | エピトランスクリトミクス / ALKBH ファミリー / メタボロミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は2種の質量分析計を用いる事でエピトランスクリプトミクス研究基盤体制を構築している。本研究課題ではDNA/RNA脱メチル化酵素遺伝子であるALKBHファミリーを中心とした癌における分子機序の解析について取り組むことを旨としている。 ALKBHファミリーリコンビナントタンパク質を用いて新規RNA修飾基質の探索的検討を行った。約40種のRNA修飾を対象とした検討からは既存基質に対する反応性は確認されたものの、残念ながらの新規の基質同定には至っていない。各ALKBH分子によって適切な反応条件が異なる可能性が考えられるため、引き続き反応条件を再構築し検討を行う。 一方、質量分析計の活用から本研究課題申請時には構築されていなかったアンターゲットメタボローム解析の体制を整えることが出来た。そこで、ALKBHファミリーのうち機能に関する報告がなく解析が最も遅れているALKBH6に特に着目し検討に着手した。ALKBH6ノックダウン細胞における代謝物変化を解析するとADP-ribose 2'-phosphateをはじめとした様々な特徴的変化が確認された。ALKBH6と癌との関連について検討したところ、淡明細胞型腎細胞癌癌部における高発現と予後不良性との相関が示唆される結果が得られている。ADP-ribose 2'-phosphate は酸化ストレスに対する応答性に関与していることが報告されている事からALKBH6は癌細胞の酸化ストレスに対する防御機構として機能し癌悪性化に寄与している可能性を現在検証している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ALKBHファミリーと会合するRNAの探索実験、及びALKBHファミリー発現抑制における各会合候補RNAのタンパク質発現について検討を行っておりALKBHファミリーがRNAと会合することによってタンパク質発現にどのような影響を及ぼし得るのか順次解析を行っている段階である。さらに、アンターゲットメタボローム解析から機能未知遺伝子であるALKBH6の生物学的意義についての片鱗が確認されつつあり、ALKBHファミリーの機能に関する新たな知見が得られている。ただし、ALKBHファミリーリコンビナントタンパク質を用いたALKBHファミリーの基質RNA修飾塩基の探索と同定を行う実験計画については、既知のRNA修飾への反応性は認められている一方で求めていたALKBHファミリーの新規基質の同定までには至っていない。そこで、現在反応条件を再考し検討を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
ALKBHファミリーによるRNA修飾制御に関して、反応条件を改善しリコンビナントタンパク質を用いて新規基質の探索実験を継続する。一方で各ALKBHタンパク質は単体では活性が十分ではなく、他のタンパク質との相互作用により酵素活性を発揮している可能性が考えられる。そこで、リコンビナントタンパク質を用いた検討に加えALKBHファミリー発現抑制細胞におけるRNA修飾の解析を平行して実施する。そしてこの細胞レベルでの検討からALKBHファミリーによるRNA修飾制御の可能性が示唆されれば会合タンパク質の探索も行う。この会合タンパク質の同定に関してはRNA修飾解析にも使用しているドリフトタイムイオンモビリティー搭載四重極飛行時間型質量分析計を活用することにより実施可能である。 また一方で、この質量分析計を用いてアンターゲットメタボローム解析が実施可能な体制を整えることができた。これはALKBH発現抑制および過剰発現時における癌細胞表現型解析に応用できると考えており、エピトランスクリトミクスおよびメタボロミクスを統合的に研究していきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
質量分析計の不具合により一部研究計画に遅れが生じた。 これに伴い質量分析に係る実験費用および学会発表が延期となり、翌年に予算を残す必要が生じたため。
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