2018 Fiscal Year Research-status Report
3D-RISM理論を応用した解析的な揺らぎ計算手法の開発
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18K14666
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
杉田 昌岳 立命館大学, 生命科学部, 助教 (30737523)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 揺らぎ / 統計力学理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度ではKim-Hirata理論の計算プロトコルの実装を行い、アスパラギン1残基、アラニンジペプチド、メチオニンエンケファリンの3分子に対して試験的な計算を行なった。その計算は本研究費にて購入した1TBのメモリ20cpuを持つラックマウントサーバを用いて行なった。アスパラギン1残基に対する結果では、解析的に計算した分散共分散行列とMDから得られたトラジェクトリのうちの一部のクラスタのデータを用いて計算した分散共分散行列との一致が見られた。メチオニンエンケファリンでも同様の結果が見られた。但し、計算された揺らぎの大きさは想定よりも小さいものであったため、複数のスナップショットを用いて計算を行う必要性があることが示唆された。また、正確な計算を行うためには非常に細かいグリッドを用いて計算を行う必要性があることが示された。アラニンジペプチドに関してはMDから得た多数のスナップショットに関して同様の計算を行い、波数の分布を得た。現在は計算から得られた波数の分布とKerr効果分光から得られたスペクトルとの関係を調査している。これまでの結果からは完全では無いものの、分子の揺らぎを解析的に計算可能であることが示されつつある。現在は方法論とこれまでに得られたテスト計算の結果を論文としてまとめる準備を進めている。また、途中経過を第56回日本生物物理学会年会および第一回松山道後・分子論セミナーにて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はKim-Hirata理論の計算プロトコルの実装を行い、小さなペプチドにて実装したプロトコルのテストを行ったあと、GB1やユビキチン等の小さな球状タンパク質の揺らぎの解析へ応用することを試みる。これまでの時点で、プロトコルの実装は完了し、メチオニンエンケファリン等の小さな分子への応用が完了しているため概ね順調であると考えられる。現在、ここまでのデータを論文としてまとめるための準備を行なっている。但し、計算に使用するメモリのサイズやcpu時間が想定していたより大きくなってしまったため、球状タンパク質への応用を行う前により効果的なプロトコルの開発を行う必要が生じてきた。そのため、現在は一部の領域のみ細かいグリッドを用いた上で分布関数の微分値を計算するための計算プロトコルを考案している。次年度には新しい計算プロトコルの実装を行なった上でより大きな系への応用を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度はkim-hirata理論の計算プロトコルをグリッドの刻み幅を変えながら計算を行うより効率の良いものに改良する。そして、Trp-cage、GB1等の小さな球状タンパク質の揺らぎの解析を開始する。また、エンケファリン等の小さいペプチドに対する理論計算の結果と分子動力学シミュレーションの結果を比較した結果を、国内および国際学会で発表すると共に論文として出版する。発表する学会としては現時点では生物物理学会年会および豊田理研ワークショップを予定している。2020年度は2019年度に引き続き小さな球状タンパク質の揺らぎの解析を行う。そして、得られた結果を国内および国際学会にて発表し、論文として出版する。
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Causes of Carryover |
当該年度は計算機を購入するための物品費として予算を申請した。申請した予算と購入した計算機の費用に若干の差額が生じたため、その差額を次年度分の旅費および物品費として用いることとした。
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