2019 Fiscal Year Research-status Report
3D-RISM理論を応用した解析的な揺らぎ計算手法の開発
Project/Area Number |
18K14666
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
杉田 昌岳 東京工業大学, 情報理工学院, 研究員 (30737523)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 揺らぎ / 統計力学 / 3D-RISM理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではKim-Hirata理論の実装及び実際の系への応用を行っている。2019年度は、2018年度と異なる方法でKim-Hirata理論を解くことに成功した。そして、本手法をアラニンジペプチド、メチオニンエンケファリンの2種類の分子の揺らぎの解析へ応用した。その結果、昨年度では再現することのできなかったペプチドのグローバルな揺らぎを解析することが可能となった。得られた結果は通常の分子動力学シミュレーションを用いて得られた結果とよく一致する。本手法を解く際には3D-RISM理論と分子動力学法(MD)を組み合わせたMD/3D-RISM法を用いるが、長時間のMDを行う必要が無いという利点を持つ。現在、本手法に関する論文の投稿準備を進めている。また、途中経過をThe 10th TOYOTA RIKEN International Workshop、第57回日本生物物理学会年会にて発表した。発表タイトルはそれぞれ、「Developing a semi-analytical method for analyzing structural fluctuations of a molecule in solution phase by means of 3D-RISM theory」、「Analysis of structural fluctuations of Met-enkephalin in the solution phase by means of 3D-RISM theory」である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究はKim-Hirata理論の計算プロトコルの実装を行い、小さなペプチドにて実装したプロトコルのテストを行ったあと、GB1やユビキチン等の小さな球状タンパク質の揺らぎの解析へ応用することを試みる。2018年度は、ある分子の小さな揺らぎを再現することの出来る計算プトロコルを実装し、メチオニンエンケファリン等の小さな分子にてテスト計算を行なった。しかし、当該手法では通常の分子動力学シミュレーションから得られるような大きな揺らぎの再現が出来なかった。そこで、2019年度はKim-Hirata理論を解く新たなアルゴリズムを考案し、そのアルゴリズムを用いてメチオニンエンケファリン等の小さな分子でのテスト計算を行なった。本手法はMD/3D-RISM法から得られた結果の重回帰分析および固有値解析を行い、解を導出する。その結果、本手法を用いて分子固有の大きな揺らぎを再現することに成功した。現在は本手法に関する論文の執筆を進めており、5月中に国際誌へ投稿を予定している。ただし、本手法では原子数の二乗に比例して重回帰分析に必要な変数が増加する。大きな分子の揺らぎの解析へ応用するためには、大量の変数に対する重回帰問題を解くための良いアルゴリズムを応用する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度、2019年度の間にkim-hirata理論の計算プロトコルを2種類開発した。2020年度はそれらの報告が中心となる。まず手法に関する論文を出版する。そして、第58回日本生物物理学会年会等で研究結果の報告を行う。また、より大きな蛋白質での解析を可能とするために、数千や数万の変数に対応する重回帰分析を解くことが可能なアルゴリズムを探索する予定である。 しかし、前職の任期が2019年度までであったため、2020年1月よりプロジェクトの研究員として東京工業大学にて雇用さることとなった。本研究は継続するが、本テーマからサブテーマへと変更となる。自身で手を動かすことのできる安定なポジションがなければ難しい研究に腰を据えて取り組むことは出来ないということを実感している。
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Causes of Carryover |
国際学会へ参加する予定で計上していた予算であったが、国内で開催された国際学会への参加へと変更となったため予算に余剰が生じた。余剰分は作業環境を向上させるための消耗品の購入へ充てる予定です。
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