2018 Fiscal Year Research-status Report
概日リズム発振にともなうKai複合体の構造変化の経時的解析
Project/Area Number |
18K14667
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
武藤 梨沙 福岡大学, 理学部, 助教 (10622417)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生物時計 / 電子スピン共鳴法 / 核磁気共鳴法 |
Outline of Annual Research Achievements |
藍色細菌の生物時計は、時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCの3つから構成され、ATP存在下で約24時間の自律的振動を生み出す。これまでに、電子顕微鏡解析やX線結晶構造解析により、時計タンパク質複合体の構造解析が行われてきたが、いずれも溶液中ではなく、生理的条件とは異なる。時間振動中の時計タンパク質複合体の継時的な構造変化およびKaiタンパク質のオリゴマー構造の変化を捉えることで、生物時計分子装置の解明を目指した。本研究では、時間振動中の時計タンパク質間相互作用の解析を溶液中で行うために、電子スピン共鳴(ESR)法を用いた。ESR法は、ラジカルを検出することで、ラジカル近傍の環境を知ることができる。申請者は、KaiBにスピンラベルを導入し、KaiAとの相互作用を明らかにした。これまでに明らかになっていた相互作用部位(Mutoh et al., 2010)に加え、新たに2か所のKaiB上のKaiA相互作用部位を同定した。また、KaiBのオリゴマー構造の変化を捉えるため、パルスELDOR法を用いた。時間振動中のKaiBは、ある時間で単量体に変化することがわかった。また、時間振動中のKaiAの構造変化を捉えるため、KaiAのN末端ドメインにHis-tagを付加した変異体を作製した。 核磁気共鳴(NMR)法を用いた時計タンパク質間相互作用解析に向け、新たにKaiAおよびKaiCの変異体を作製した。現在、それらの変異体の活性を確認し、NMR測定に向けた準備を行っている。今後は、作製した変異体を用いて、順次測定を行い、解析を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究に必要な変異体の作製を順調に進めることができた。現在、それらの発現と活性を確認しているところである。 ESR法では、パルスELDOR法を用いて、KaiBのオリゴマー構造が時間振動中にどのように変化するのかを調べた。これまでの研究で、通常は4量体で存在するKaiBが、時間振動中には単量体になるのではないかと予測されていた。今回の測定の結果、KaiBは時間振動中に単量体になることが示唆された。しかし、KaiCに結合したKaiBがKaiCから解離した後、KaiBが単量体のままであるのか、それとも単独で存在するときには4量体に戻るのかは明らかになっていない。 NMR法では、タンパク質の分子量に制限があるため(50kDa以下が好ましい)、Kaiタンパク質を直接観測することが難しい。そこで、KaiAまたはKaiCの一部のみをNMR標識することで、溶液中の相互作用部位を同定しようと試みている。現在までに複数のプラスミドを作製し、培養条件の決定を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
作製した変異体が野生型と同等の活性を持っているのか検証する。活性を確認後、順次NMR測定を行い、KaiA、KaiB、KaiCを混ぜ合わせて時間振動させ、KaiAまたはKaiCの相互作用部位を同定する。そのためには、まずNMRピークの帰属を行う必要がある。今年度は、帰属を進めると同時に測定を行い、必要があれば変異体の改良を行う。
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Causes of Carryover |
高価な試薬を購入予定であったが、試薬を譲り受けたため購入の必要がなくなったため、本年度は使用額が少なかった。また、旅費に関しても、招待講演だったため、交通費のみで済んだため、予定よりも使用額が少なかった。次年度はNMR測定を頻繁に行う予定であり、試薬と旅費が必要になるので、次年度に使用を繰り越した。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] X-ray structure of the type-I reaction center from Heliobacterium modesticaldum at 3.2 Å resolution2018
Author(s)
T. Nakaniwa, R.Mutoh, K. Fushimi, A. Yasuda, T. Mizoguchi, H. Tamiaki, C. Azai, H. Tanaka, S. Itoh, H. Oh-oka, G. Kurisu
Organizer
第56回日本生物物理学会年会
Invited