2020 Fiscal Year Research-status Report
概日リズム発振にともなうKai複合体の構造変化の経時的解析
Project/Area Number |
18K14667
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
武藤 梨沙 福岡大学, 理学部, 助教 (10622417)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生物時計 / 核磁気共鳴法 / 電子スピン共鳴法 |
Outline of Annual Research Achievements |
藍色細菌の生物時計分子装置は、時計タンパク質KaiA、KaiB、KaiCの3つから構成されており、試験管内でATPを駆動力として約24時間の周期で自律的に振動することが分かっている。これまでに、Kaiタンパク質それぞれの結晶構造が明らかにされ、KaiBC複合体、KaiABC複合体の構造も明らかになりつつあるが、それらは24時間のうちの一瞬しか反映しておらず、時計の本質が明らかになったとは言えない。そこで、本研究では、核磁気共鳴(NMR)法と電子スピン共鳴(ESR)法を用いて、これら3つのタンパク質が、いつ、どこで相互作用しあうかを明らかにすることで、生物時計の作動原理を理解することを目的とした。 これまでに、申請者はKaiBにスピンラベルを導入し、KaiAとの相互作用部位を同定してきた(Mutoh et al., 2010)。これらの結果に基づき、新たに複数個所にスピンラベル導入し、網羅的にKaiB上のKaiA相互作用部位の探索を行った。KaiBのD57をCysに置換したKaiBにスピンラベルMTSSLを導入し(MTSSL-KaiBD57C)、KaiAおよびKaiCをATP存在下で混合し、4時間ごとに試料を回収した。それをESR測定した結果、KaiA-KaiBの相互作用は12時間目と36時間目に起こることを捉えた。次に、KaiAのN末端にHisタグを付加し、そこへCu2+を結合させ、ESR測定を行った。その結果、室温でCuのESRスペクトルを観測することができた。スピンラベルを導入する以外の測定方法として、有用であることを今後検討する。 さらに、生物発光測定装置を用いて、KaiC結合ATPが経時的に遊離する現象を捉えた。それはKaiC単独で起こることが明らかになり、KaiC自身が振動を生み出すことを示唆する結果を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は新型コロナウイルス感染症拡大のため、NMR測定のための出張を行うことができなかったが、NMR測定の予備実験を行い、次年度以降にスムーズに実験へ移行できるように準備を行った。そのほかの実験は、概ね予定通りに進んでいる。 ホタルルシフェラーゼの生物発光を用いて、KaiCからのATP遊離量を測定する実験系を構築することができ、KaiC単独でも(KaiAやKaiBなしでも)振動する現象を捉えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
NMR標識したKaiCのNMR測定条件を決定し、KaiA、KaiB、ATP存在下のリズム発振中の相互作用部位および構造変化の解析を行う。KaiBやSasAもNMR標識し、リズム発振中の複合体形成や相互作用部位を明らかにする。 KaiAのN末端ドメインの構造変化は、リズム発振する際にはリズムの振幅を大きくするのに不可欠であると考えている。Cu付加His-tag KaiAを用いることで、N末端ドメインの構造変化を捉える。そのために、Cu付加His-tag KaiAの活性確認を行う。このCu付加の測定系を確立し、スピンラベルを導入することが難しいタンパク質へのESRの応用となるよう検討を行う。
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Causes of Carryover |
2020年度に予定していた大阪大学蛋白研究所でのNMR測定が、新型コロナウィルスの影響で出張ができず、実験を行うことができなかった。そのため、次年度に実験を行うために予算を繰り越した。
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Research Products
(6 results)