2018 Fiscal Year Research-status Report
Development of universal baculovirus vector system for synthetic biology
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18K14686
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
田附 常幸 九州大学, 農学研究院, 学術研究員 (80637843)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | バキュロウイルス / ゲノム科学 / バイオインフォマティクス / 生物物理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
昆虫を宿主とするバキュロウイルスは高等真核細胞での遺伝子発現ベクターとしてバイオ医薬品の生産等で利用されている。バキュロウイルスは同一のゲノム DNA から包埋体由来ウイルス(ODV)と出芽ウイルス(BV)を生産するが、遺伝子発現ベクターとしては BV のみで機能する。本研究はバキュロウイルスを汎用遺伝子発現ベクターとして最大限に活用するために、最小の機能を持つ基本システムを同定・構築し、様々な人工遺伝子回路を拡張システムとして搭載可能な次世代型汎用バキュロウイルスベクターシステムの基盤を創出する。そのために、①分子生物学実験、②バイオインフォマティクス解析、③合成生物学的再構成実験を行い、BV の生産に関わる遺伝子群をシステム規模で相互関係を考慮に入れて同定し、構成要素を整理・再編することで再構成に必要な基礎知見を収集し、バキュロウイルスベクターとして機能する最小の基本システムを再利用可能な Bacmid として構築する。 本年度は「①分子生物学実験」で使用するベクター類、酵素類を作製・調製し、次年度以降に必要なバイオインフォマティクス解析に必要な機器およびソフトウェア環境のセットアップを行った。また、分子生物学実験に先立ってバキュロウイルスのゲノムDNAの物理的性質に着目して数理・情報学的解析を行ったところ、バキュロウイルスのゲノム DNA は物理的性質に基づいておよそ 3 つのグループに分かれ、さらに約 10kbp の周期で DNA の柔軟性が増減していることが判明した。これはバキュロウイルスのゲノム DNA の収納に物理的構造の規則があることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題採択後の研究代表者の勤務形態の変化とその後の研究環境の激変(九州大学キャンパス移転)、及び所属研究機関の異動のため、十分な研究時間を確保できていないことが本研究課題の遅れの原因である。また、本研究で使用するバキュロウイルスを Bombyx mori nucleopolyhedrovirus(BmNPV)から近縁の Autographa californica multiple nucleopolyhedrovirus(AcMNPV)に変更した。AcMNPV は BmNPV と比較して世界的に使用者数が多く、ウイルスの基礎研究の対象としての知見が豊富である。加えて、近年に宿主となる昆虫(Trichoplusia ni)や細胞(High Fiveなど)の全ゲノム配列情報やAcMNPV感染時のRNAの発現変化が RNA-seq で解析されるなど、本研究課題申請時よりもシステム生物学に必要なデータが量・質ともに飛躍的に充実している。そのため BmNPV 用に構築していたシステムを AcMNPV 用に作り変えて研究を推進することにした。さらに、ゲノムDNA解析技術の発展に合わせてウイルスゲノム DNA の縮小化とシーケンス方法を見直し、申請時よりも効率よく目的を達成可能な方法への改善を行った。また、これまでの研究成果から分子生物学パートにおいて想定外の事態が発生した場合には、遺伝学的要因のほか、ゲノムDNA 物理的性質も考慮する必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
AcMNPV を対象として研究を推進し、改良型の新システムを用いて遅れを取り戻し、本来の計画に従って計画を遂行する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度の残金 38,550 円と次年度の執行額と合算して、人工合成 DNA 等を購入する。
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