2018 Fiscal Year Research-status Report
光で細胞内ミオシンIIをダイレクトに操作する新規力学的制御ツールの開発
Project/Area Number |
18K14691
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
上地 浩之 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (50755452)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光遺伝学 / アクトミオシン |
Outline of Annual Research Achievements |
アクトミオシン (アクチン・ミオシンII複合体) は細胞内で収縮力を生成する実行因子であり、適時適所で機能することで、分裂・移動・入替わり・変形など様々な細胞動態を惹起する。よってアクトミオシンを局所的に操作し、その収縮力を時空間的にコントロールできれば、多彩な細胞動態が混在する発生をはじめ複雑な生命現象を紐解く重要な手段となる。近年、光遺伝学に基づきアクトミオシン上流の制御因子を対象とした遺伝学的ツールが開発されているが、これら制御因子がアクトミオシン以外の細胞内分子も制御していることを考慮すると、アクトミオシン機能の一義的な理解にはアクチンないしミオシンIIを直接制御する系が必要である。そこで本研究では、光照射でミオシンII分子を操作するツールを開発することを目的とした。 本研究では、ミオシンII活性の局所的阻害と亢進の二方向でツール開発を進めた。前者では、光照射で蛍光発色団から活性酸素種を発生させ標的タンパク質を不活化するCALI (発色団補助光不活化) 法に基づき、ミオシンII調節軽鎖とCALIに最適化された傾向タンパク質SuperNovaを融合したノックインショウジョウバエを作出し、局所的にショウジョウバエミオシンIIを不活化するツールを獲得した。後者では、ミオシンII調節軽鎖の恒常活性変異体に、LOVドメインやpdDronpaなど特定波長の光照射でコンフォメーション変化を起こすタンパク質を付加し、光照射時のみ恒常活性型が解放され定常時では機能しないようなコンストラクトを培養細胞で検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ミオシンII不活化について、作出した調節軽鎖-SuperNova融合ノックインショウジョウバエを用いて個体内で活性操作を試みた。ショウジョウバエのオスは変態期に外生殖器を一回転させ、当研究室はこの組織動態を支持する細胞移動が、アクトミオシンの収縮力を介した細胞接着辺の繋ぎかえ (収縮と新規伸長) により駆動されることを見出していた。本発生モデルを利用し、細胞移動中の組織に継続的に光照射したところ、繋ぎかえの頻度が減少するとともに、細胞接着辺にかかる張力が低下することを確認した。また、接着辺の収縮はそこに集積するアクトミオシンの収縮力により進行することが広く知られているが、接着辺特異的に光照射を行い、その収縮を局所一過的に阻害することに成功した。さらに、細胞接着辺伸長の力学的メカニズムは未だ不明な点が残っていたが、本ツールを用いた局所的光照射実験により、接着辺両端のミオシンIIが伸長に寄与していることを新規に見出した。 ミオシンII活性化について、ミオシンII調節軽鎖の恒常活性変異体にLOVドメインを結合し、その連結部位に変異を加え、ミオシンII重鎖と共にショウジョウバエ培養細胞に発現させた。免疫沈降実験により、定常時はLOVドメインの立体障害により重鎖と調節軽鎖の結合が阻害されるが、光照射時はLOVドメインのコンフォメーション変化で重鎖と調節軽鎖の複合体形成が回復するようなコンストラクトを網羅的に探索した。しかし、調節軽鎖を適切にマスクするコンストラクトは得られなかった。そこで最近報告された、特定の波長照射で蛍光と多量体化を制御できるタンパク質pdDronpaを検討することとした。これを調節軽鎖に結合し培養細胞に発現させ、調節軽鎖が近傍に存在することが、pdDronpaの光照射による多量体化を阻害しないことを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
調節軽鎖-SuperNova融合ノックインショウジョウバエについて、雄外生殖器回転運動以外の発生イベントでもミオシンIIを不活化できるか検討する。例えばショウジョウバエ腹部上皮形成では、幼虫細胞が上皮層からアクトミオシンを介した頂端収縮により排除されるが、調節軽鎖-SuperNovaがこれを阻害できるか、いつ・どこに局在するアクトミオシンが責任因子であるのかを、これまでの解析で確立された照射方法を基に検討する。 ミオシンII活性化コンストラクトについては、LOVドメインが適切ではなかったことから、光感受性タンパク質であるpdDronpaに変更し検討する。ミオシンII調節軽鎖の恒常活性変異体のN、C両末端に本タンパク質を結合し、pdDronpaの二量体化が立体障害となり、ミオシンII調節軽鎖と重鎖の相互作用を阻害するようなコンストラクトをスクリーニングする。LOVドメイン同様に、調節軽鎖とpdDronpaの結合部位に欠失や挿入など変異を導入し、光照射の有無と免疫沈降実験で相互作用を確認する。適切なコンストラクトが得られれば、このトランスジェニックショウジョウバエを作製する。
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Causes of Carryover |
スクリーニングでヒットしたコンストラクトの培養細胞系での検討実験や、ショウジョウバエ作製とその解析を初年度に予定していたが、有用なコンストラクトの作製に難航し予定よりも進捗が遅延したため、該当年度の使用額が減少した。これらの実験は次年度に、次年度使用額を用いて行う予定である。
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Research Products
(2 results)