2019 Fiscal Year Research-status Report
血球細胞を介したNotchシグナル伝達の遠隔制御メカニズムに関する研究
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18K14697
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山川 智子 大阪大学, 理学研究科, 助教 (20645402)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 貪食細胞の移植 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究代表者の研究結果から、ショウジョウバエpecanex (pcx)遺伝子の機能を失った胚 (以下、pcx胚とする)では、貪食細胞の小胞体が肥大化することがわかった。さらに、pcx突然変異貪食細胞から予定神経上皮域におけるNotchシグナルを抑制する因子が分泌される、という仮説を支持する結果を得た。そこで本研究は、貪食細胞の除去・移植実験、pcxと遺伝学的相互作用を示す貪食細胞遺伝子の同定という、3つの実験から本仮説を証明することを目的としている。 令和元年度においては、貪食細胞の移植実験を完了することができた。貪食細胞を回収するため、貪食細胞特異的にmCherryを発現する野生型胚とpcx胚から、セルソーター (AriaⅢu)を用いて貪食細胞を回収した。しかしながら、移植実験に十分な数を得ることが難しかったため、より簡易に多くの貪食細胞を持つ幼虫を用いることを検討した。その結果、pcx突然変異幼虫における貪食細胞も、胚と同様に小胞体の肥大を示すことが判明した。そこで、コントロールとしてPBS、野生型幼虫とpcx突然変異幼虫における貪食細胞をそれぞれ野生型胚に移植し、神経細胞を可視化するための染色を行った。その結果、pcx突然変異貪食細胞を移植した野生型胚が、Notchシグナル伝達の喪失を意味する神経過形成を示した。しかしながら、PBSや野生型貪食細胞を移植した野生型胚は、神経系の異常は示したものの、神経過形成は示さなかった。さらに、ショウジョウバエ胚の中胚葉に対して、細胞毒性を持つリシンを発現させ、人為的に貪食細胞の発生を阻害した。その結果、野生型胚と比較してpcx胚では神経過形成が回復した。 これらの結果は、貪食細胞を介したNotchシグナル伝達の遠隔抑制という、本研究で掲げた仮説を強く支持している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
第二の実験である貪食細胞の移植実験を完了することができ、本研究における仮説を支持する結果を得ることができた。昨年度において、ショウジョウバエ胚から安定的に貪食細胞を回収するプロトコールを確立できたものの、実験に用いるために十分な数を集めることが難しかった。そこで、胚から幼虫に対象を変更することができるかを検討した。幼虫においてもpcx突然変異貪食細胞の特徴である小胞体の肥大が見られたことから、適応可能であると判断し、幼虫における貪食細胞の移植実験を行い、成功することができた。また、昨年度に行った第一の実験である貪食細胞の除去実験をさらに検証するため、異なる方法で貪食細胞の除去に成功した。その結果、これまでの実験結果をさらに支持する結果を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、貪食細胞を胚から十分量回収できないことが問題となっている。そこで、第三の実験であるRNAシーケンスに関して、微量の貪食細胞からRNAを抽出する、または微量RNAからRNAシーケンス法を行う方法を検討している。これにより第三の実験が達成されれば、本研究計画書で提案した実験をほぼすべて完了できる見込みである。
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Causes of Carryover |
セルソーターにて回収した貪食細胞よりRNAを抽出する予定であるが、回収した貪食細胞数が予想よりも少なく、冷凍保存して十分な量を集めてから抽出を行うことにした。そのため、抽出に要する試薬を次年度に購入することとした。
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Research Products
(2 results)