2018 Fiscal Year Research-status Report
中心小体の複製開始メカニズム ~無秩序な分子の集合から構造体の構築へ
Project/Area Number |
18K14706
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉場 聡子 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特任助教 (70642213)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 中心小体複製 / STIL / 天然変性領域 / PLK4 / SAS-6 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、動物細胞において進化的に保存された細胞小器官である、中心小体の複製開始のコアメカニズムの理解を目指している。中心小体複製のイニシエーターである3つのタンパク質、PLK4, STIL, SAS-6が相互作用し新しく作られる中心小体の数を一つに限定する一方で、どのように集合して9回対称構造を持つ構造体(中心小体前駆体)を形成するのか、これらタンパク質の分子的性質を精査することで手がかりを得ようと試みた。すでにPLK4に関しては、当研究室の研究により、自己リン酸化を介して、液―液相転移により自己集合する生化学的性質を持つことがわかっている(Yamamoto, 2019)。この自己集合したPLK4にSTIL, SAS-6がどのように集まるのかを明らかにするため、PLK4の基質であるSTILの分子的性質にフォーカスした。STILは、N1, N2と、PLK4の結合に必要なN3, SAS-6との結合に必要なCからなるが(Ohta 2014, 2018)、N1N2については機能不明な点が多かった。タンパク質凝集の一つの指標となるPLAACおよび天然変性領域を予測するPrDOSを用いてSTILの配列を調べたところ、N1の一部でプリオン様配列、N2で高頻度に天然変性領域が見られた。これらのフラグメントを細胞内で発現させ、PLK4との共局在を調べたところ、Cを含むフラグメントはSAS-6に依存して共局在し、一方でN末フラグメントはSAS-6に依存せずに共局在することがわかった。また、STILのリン酸化模倣体は、細胞内で自己集合し凝集体を作ることがわかった。この意義については現在検討中である。これらの結果より、中心小体複製開始に必須の分子の性質の一端が明らかになり、本研究の目的である複製開始のメカニズムの解明に一歩近づいた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の中心小体複製開始のメカニズムについて、新たに興味深い知見を少しずつ積み上げているが、一方で技術的な問題につき当たっている。当初予定していた、中心小体複製開始におけるPLK4,STIL,SAS-6を含む複合体のin vitro再構成のため、主要タンパク質の同時精製を試みたが、複合体を精製することができなかった。現在方針を変更し各タンパク質の性質を精査しながら、個別に精製し複合体形成を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
中心小体複製開始の主要因子の一つであり、PLK4とSAS-6をつないでいるアダプター分子STILにフォーカスし、その分子的性質を精査することにより、複製開始のメカニズムのさらなる理解を目指す。最近、中心小体複製のkey kinase PLK4は、自己リン酸化を介して、液―液相転移により自己集合する性質を持つことが明らかになった(Yamamoto, 2019)。STILはPLK4の基質であり、リン酸化されたSTILは構造タンパク質であるSAS-6と相互作用することで、構造としての中心小体の形成開始の鍵を握ると考えられる。自己集合したPLK4にSTIL, SAS-6がどのように集まり構造体を作るのかを明らかにするため、前年度に引き続きSTILの生化学的性質を追究する。昨年度の結果をもとに、STILタンパク質の特定の配列の欠損または変異を導入して、集合に必要なアミノ酸配列を同定する。さらに、STILとSAS-6の相互作用によるSAS-6の取り込みと構造体の形成との関係を明らかにする。最終的には、これらタンパク質のin vitro再構成をおこなうことにより、中心小体複製開始において、分子の集合が秩序を持った構造体へ変換されるメカニズムの解明を目指す。
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