2019 Fiscal Year Research-status Report
脊椎動物における進化と発生の反復傾向の検証に向けた発生時系列の遺伝子制御動態解析
Project/Area Number |
18K14711
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
上坂 将弘 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (20756499)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 進化発生学 / 進化 / 発生 / 反復説 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「発生過程は、進化的に古い変更が先に、新しい変更が後に反映されながら進行する」という反復傾向を、発生過程に関わるゲノム領域の進化的経緯に着目し、検証する。 近年、遺伝子発現プロファイルの比較から、発生中期(咽頭胚期)が、初期や後期と比較して、脊椎動物の進化を通して変化してこなかったことが明らかになってきた(発生砂時計モデル)。この咽頭胚期以降の発生過程で、生物種特異的な形態が作り上げられていくが、この発生過程には、まるで進化の歴史を繰り返すように見える形質がこれまで報告されてきた。しかし、これまで後期発生過程において、反復的傾向が見られるか定量的に検証されたことはなかった。そこで本研究では、この発生反復説を支持する形質の枚挙する従来の研究とは異なり、進化の過程で獲得してきた遺伝子制御領域の使われ方に着目して、反復説の妥当性を検証した。 これまでの研究から、脊椎動物の発生過程において、進化的に古いゲノム領域が先に、新しいゲノム領域が後にクロマチン状態がオープンになる傾向が観察された。また、この反復傾向は進化的に保存された遺伝子発現を示す咽頭胚期以降でのみ見られた。 今年度では、反復傾向が比較するゲノムの種類や解析条件によらず検出できることを確認した。また、転写開始点から離れたオープンクロマチン領域のみに着目しても、反復傾向が見られたことから、エンハンサーの活性化パターンも進化的年代と相関する可能性が示唆された。 一方で、今回観察された反復傾向が遺伝子発現の進化的多様性と対応しているかどうかについては不明である。そのため今後は、オープンクロマチン領域を生物種間で比較することで、オープンクロマチンレベルで見られた反復傾向と、発生に伴って変化する遺伝子発現プロファイルの多様性が互いに整合的かどうかを調べていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脊椎動物の発生過程において観察されたゲノムのオープン度(Chromatin accessibility)における反復傾向が、特定の解析条件によるものではないことを確認した。また、オープンクロマチン領域を、転写開始点からの距離に基づいてグループ分けを行った上で、反復的傾向が見られるか検証した。プロモーター近傍のオープンクロマチン領域に着目した場合に比べて、それ以外の非コード領域に存在するオープンクロマチン領域に着目した場合のほうが、反復的傾向が明瞭だったことから、エンハンサーの活性化パターンのほうが、反復的傾向が強いことが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
活性化した遺伝子制御領域は、クロマチン構造がオープンになっている傾向が知られているため、脊椎動物の発生過程で見られた反復傾向は、遺伝子制御領域の活性化パターンを反映しているかもしれない。しかしながら、この反復傾向が、砂時計型を示す遺伝子発現プロファイルの進化的多様性のパターンと対応しているかどうかについては不明である。今後は、オープンクロマチン領域を生物種間で比較することで、オープンクロマチンレベルでの進化的保存性を調べ、発生に伴って変化する遺伝子発現プロファイルの多様性が互いに整合的かどうかを調べていく予定である。
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Causes of Carryover |
当初の想定より実験試薬等の消耗品の購入が予定より少なかった。また、海外学会への参加がなかったため、次年度使用額が生じた。来年度は、本年度で得られた成果をもとに、更に実験を進めるため、当該助成金を主として消耗品購入に使用する予定である。
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