2019 Fiscal Year Annual Research Report
Enhancer regulation governing multipotency of human hematopoietic progenitor cells
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18K14713
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
木谷 瑶子 (北川瑶子) 京都大学, iPS細胞研究所, 特別研究員(PD) (20811409)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 血球分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト造血幹細胞の分化過程における転写エピゲノム制御解明を目的とする。臍帯血由来造血幹細胞をリファレンスとし、ESおよびiPS細胞を用いたin vitro血球分化システムを活用することで、分化初期からの継時的な変化を捉える。 血球分化過程の網羅的な転写エピゲノム制御解析によりin silicoで血球分化の引き金となる分子制御に関わる制御因子候補を挙げ、CRISPR-Cas9によるゲノム編集により機能検証を行った。その結果、転写因子X欠損により血球細胞の分化が完全に阻害された。この結果はES細胞、iPS細胞の両方で確認できた。因子XはES/iPS細胞や中胚葉、血管内皮細胞の分化・維持には影響を与えず、血管内皮細胞から血球細胞が分化する過程に必要であることが明らかになった。これまでの我々の解析から分化10日目のCD34+CD45-細胞で血球特異的トランスクリプトームの獲得が確認できているが、X欠損血管内皮細胞では血球特異的トランスクリプトーム誘導に顕著な障害が認められた。特に、血球分化のマスター転写因子であるRUNX1の発現が低く、因子XはRUNX1発現誘導の前提条件であると示唆された。 次に、さらに分化を遡り因子Xの機能を調べた。野生型では分化7日目のCD34+CD45-細胞から一部の血球特異的エンハンサーの活性化が認められたが、X欠損細胞では活性が低かった。また、この時期には血管内皮細胞の動脈内皮化が起こるが、複数の動脈内皮関連遺伝子の発現がX欠損により減少した。動脈内皮化が血球分化の前提条件であることは今年度報告された知見であり、因子X同定は血球分化メカニズム解明において重要な鍵となると期待される。 上記の結果により、本研究では血球分化に必須な因子Xを同定し、X依存的な血管内皮動脈化および血球特異的エンハンサー活性化が血球特異的転写制御を誘導することが明らかになった。
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