2019 Fiscal Year Research-status Report
Establishment of new human pluripotent stem cell with unbiased differentiation potency.
Project/Area Number |
18K14714
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
中村 友紀 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (90648429)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 多能性幹細胞 / 霊長類 / 高次元空間ノイズ / 次元の呪い / scRNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
霊長類多能性幹細胞(Pluripotent Stem Cell; PSC)の分化偏向性解消に向けて、研究代表者はin vivoの原腸陥入直前の状態を模倣することで達成できるのではないかという仮説を立てた。このため①in vivoにおける原腸陥入前Epiblastの状態と環境を分子レベルで調べる、②PSCの培養条件の検討と検証を行う、という二つの研究を進めている。 前年度までにサルESCの安定未分化維持培養系の確立とレポーターESCの樹立をした。確立したサルESCの未分化状態維持培養系を利用し、生殖系譜への誘導系も確立、性情解析を行いin vitroにて誘導される霊長類始原生殖細胞がin vivoの始原生殖細胞と相同な遺伝子発現プロファイルを有することを報告した。また本年度の目標は原腸陥入前状態を維持する候補因子の同定であったが、in vivo transcriptomeデータからの候補因子探索において非常に重要かつ極めて広範に影響を及ぼしうる課題を見出し、その解決に重きを置いた Single cell RNA-seq (scRNA-seq)ではdrop out effectという、極微量な初期RNA量に由来する情報欠失が起こる観測ノイズが含まれる。研究代表者は純粋数学者の協力のもと、このdrop out effectが次元の呪いという高次元数値解析において様々な影響を及ぼすことに気付いた。この結果、細胞の分類におけるクラスタリングなどが正しく行われず、原腸陥入前後におけるEPIが分類されず適切な候補因子の同定に至れていなかった。現在までに、純粋数学者とともにscRNA-seqのノイズを除去する方法を開発し、サルのin vivo transcriptomeデータ中にこれまで見ることのできなかった新たな細胞種を発見するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の計画を遂行するにあたり、scRNA-seqにおける次元の呪いという新たな課題に遭遇した。scRNA-seqにおける次元の呪い問題はこれまで報告がなく、昨今急激に普及し多くの論文で使用されているscRNA-seq解析の、おそらくほとんど結果が呪いの影響を受けたまま解釈されており、間違った結論に至っている可能性が高い。我々が開発したノイズ除去法は次元の呪いを回避する新たなscRNA-seq解析のプラットフォームを提供し、正しい結論へと導きうる。このことから、ノイズ除去法を報告することは非常に影響の大きい喫緊の課題といえるとともに、原腸陥入前胚の状態を再現するうえで回避できないステップであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策は、次元の呪いを回避するノイズ除去法の更なる改良と検証、そして論文報告と特許申請を行う。これと同時にサルin vivo transcriptomeデータへ適用し、原腸陥入前状態を誘導する候補因子の同定を行い、レポーターESCを用いたスクリーニングを完遂する。
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Research Products
(5 results)