2018 Fiscal Year Research-status Report
表現型多型に伴った行動多型を制御する神経回路とその形成機構の解明
Project/Area Number |
18K14716
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
奥村 美紗子 広島大学, 理学研究科, 助教 (40806486)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 線虫 / Pristionchus pacificus / 捕食行動 / セロトニン / セロトニン受容体 / 表現型多型 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境に応答して同一の遺伝子型であっても複数の不連続な形態をとりうる「表現型多型」は,多くの種において行動の違いも付随する.しかし,環境に応答しながらどのように神経回路の変化がつくられ,異なる行動を制御しているのかはほとんどわかっていない.線虫Pristionchus pacificusでは口の形に表現型多型がみられ,それに伴って他の線虫に対する捕食行動とバクテリア食性という異なる摂食行動を示す.本研究ではまず2つの摂食行動がどのように制御されているか明らかにすることを目指した.これまでの研究により,P. pacificusの捕食行動には,神経伝達物質であるセロトニンが関わることが知られているが,セロトニンの下流でどのような神経回路が機能しているかは解明されていなかった.セロトニンの下流で機能する神経回路を同定するために,セロトニン受容体に着目した.CRISPR/Cas9ゲノム編集技術により,これまで知られている5つのセロトニン受容体すべての変異体を作出し,捕食行動のアッセイをおこなった.その結果一部のセロトニン受容体が捕食行動に重複して関与することを明らかにした.さらにセロトニン受容体の発現パターンを調べたところ,一部の咽頭神経でセロトニン受容体が発現していることを見出した.今後この神経細胞を遺伝学的に除去することでセロトニン受容体を発現する細胞が捕食行動を制御しているか,また口の形の表現型多型にともなってセロトニン神経回路に違いがみられるか明らかにしていく.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
トランスジェニック系統の作製の効率向上やゲノム編集技術によるノックイン法の確立など,研究計画の内容を進める上に不可欠な遺伝学的ツール開発にやや時間がかかっているが,当初の予定どおり変異体の作出や行動アッセイ,レポーター系統による発現解析をおこなっており,セロトニン神経回路に関する解析は進んでいる.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに作製したセロトニン受容体の変異体の行動解析を進める.またトランスジェニックレポーター系統の作出と発現解析を進め,セロトニン神経回路の捕食行動に関わる機能を明らかにする.さらに口の形の表現型多型に伴った神経系の違いの同定を進める.
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Causes of Carryover |
当初予定していたより消耗品や物品の購入を抑えることができたため2018年度の使用額が減少した.2019年度はこれまで予定していた国際学会への参加費用に加え,線虫の飼育に必要なプレートなどの消耗品や分子生物学に必要な試薬の購入を予定している.
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