2018 Fiscal Year Research-status Report
ゲノム編集による四肢再生特異的発現遺伝子の機能解析とツメガエル成体の再生能回復
Project/Area Number |
18K14723
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
川住 愛子 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 研究員 (80625484)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 四肢 / 再生 / アフリカツメガエル / ネッタイツメガエル / ゲノム編集 / Crispr-Cas9 / トランスクリプトーム解析 / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
アフリカツメガエルは高い再生能力をもっており、幼生期に四肢を切断しても完全に再生することができる。このアフリカツメガエル幼生の四肢再生・発生過程における形態形成期についてRNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行った結果、再生領域特異的に発現上昇する遺伝子10個が同定された。 この10個のうち最も発現量の差が大きい2つの候補遺伝子(X1, X2)について、Crispr-Cas9系を利用したゲノム編集による機能解析(Loss of Function)を2倍体であるネッタイツメガエルに対して行った。Founder個体(F0)は高いモザイク性を示したため次世代(F1)による解析を行ったところ、遺伝子X2の変異個体(幼生)について四肢再生が異常になる表現系が得られた。この時、四肢再生異常を示した個体は左後肢のみを切断し、右後肢はそのまま発生過程を進めていたのだが、四肢発生に関しては全く異常が見られなかった。この様な「四肢発生には影響せず四肢再生だけで働く遺伝子」はこれまでに知られていない。 次に、熱ショック応答により遺伝子X1, X2発現を誘導できるTransgenicアフリカツメガエル個体を作製し、四肢再生領域でX1, X2を過剰発現させることによってこれら遺伝子の機能解析(Gain of Function)を行った。野生型のアフリカツメガエルでは、変態後の個体は幼生よりも再生能力が低く、四肢切断を行った場合には1本の棒状軟骨をもつ「スパイク」が再生するのみで指などのパターンは再生しない。ところが、熱ショックにより遺伝子X1を再生領域で過剰発現させたTg個体(変態後の幼若個体)について後肢切断を行い再生させたところ、先端が2~3本に分岐した軟骨をもつ器官が再生するという表現系が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の通りに実験を遂行できた。得られた結果に関しては、細かい部分では予想と異なっていたが、さらなる実験を行うことにより、実際に得られた結果が正しいことを確認できている。 以上より、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ネッタイツメガエルにおける遺伝子X1のゲノム編集F1個体(幼生)の四肢発生・再生を解析し、遺伝子X2と同様に四肢再生異常が見られること・四肢発生異常は見られないことを確認する。さらに遺伝子X1とX2の両方に変異をもつ個体を作製し、遺伝子X1やX2単独で見られた再生異常よりもシビアな異常が見られるかを確認する。そして遺伝子X1, X2それぞれ単独のゲノム編集個体、またはX1/X2ゲノム編集個体の再生部位における形態形成遺伝子発現を確認し、野生型と比べたときに四肢再生における形態形成プログラムのどこに異常が生じているかを明らかにする。 次に、熱ショック応答により遺伝子X2発現を誘導するTransgenicアフリカツメガエル個体(変態後の幼若個体)について後肢切断を行って再生させ、どの様な軟骨パターンをもつ器官が再生するかを確認する。また、遺伝子X1, またはX2を過剰発現させたTg個体の再生部位における形態形成遺伝子発現を確認し、野生型と比べたときの四肢再生における形態形成プログラムにおける変化を確認する。
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