2018 Fiscal Year Research-status Report
植物における概日時計の環境応答性および標的遺伝子の組織特異性の解析
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18K14732
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 佳祐 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (20805931)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 概日時計 / 組織特異性 / 細胞運命決定 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物時計は外部環境の24時間周期に同調し、明暗周期や季節変化を予測することで、生理応答を適切なタイミングで制御するための内生の計時機構である。動物の生物時計は、組織ごとに異なる遺伝子群の発現を制御することで、組織ごとに異なる生理応答を制御できることが知られている。近年、植物の生物時計にも組織特異性が存在することが明らかになってきた。しかし、全身で共通している概日時計の構成因子が、それぞれの組織でどのような刺激を受容し、どのような遺伝子を制御することで異なる生理応答を制御するかについては未明である。本研究では、各組織の生物時計がもつ性質・役割を解析し、生物時計の組織特異性がもつ生物学的な意義を明らかにする。 本年度は、組織特異的な時計遺伝子の標的遺伝子について解析を進めた。時計遺伝子の1つであるLUX/PCL1 (当初の予定ではCCA1を用いる予定であったが、発現量の関係からLUX/PCL1に変更した) と蛍光タンパク質GFPの融合タンパク質を発現する株を用いて、クロマチン免疫沈降 (ChIP) の条件検討を行った。組織の固定条件やDNAの剪断条件を検討することによって、良好なシグナルを得ることに成功した。そこで、葉肉細胞から幹細胞を経て維管束細胞へと分化する分化転換系を用いて、幹細胞 (維管束幹細胞を含む) におけるLUX/PCL1の標的遺伝子をChIP-seq解析によって網羅的に同定し、LUX/PCL1が細胞増殖や維管束細胞分化に関与する遺伝子を制御することを明らかにした。このことから、時計遺伝子が細胞分化 (少なくとも維管束細胞の分化) を直接的に制御することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
年度始めの自身の異動に伴い研究環境が変化したため、実験の進行が少し遅れている。 時計遺伝子の組織特異的な標的遺伝子の探索には成功しているものの、環境刺激への応答やクロマチン状態の解析が遅れているので解析を急ぐ必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き他の組織に関しても標的遺伝子の探索を行う。光や温度といった環境刺激に対する組織時計の応答性の解析を進めるとともに。ATAC-seqによるクロマチン状態の解析系を立ち上げ、各組織におけるクロマチン状態の日周変化を解析する。
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Causes of Carryover |
年度始めの異動もあり、実験準備に当初の予定以上に時間を要し、次年度に使用した方が合理的であると考えられたため翌年度分として請求した。
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Research Products
(2 results)