2018 Fiscal Year Research-status Report
厳密な母性遺伝を保証するメス由来のオルガネラDNA保護機構の解明
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18K14733
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田草川 真理 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (90711599)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 葉緑体 / クラミドモナス / 母性遺伝 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内でエネルギーを産生するミトコンドリアや、光合成を行う葉緑体は、独自のDNAをもち、母親からのみ子孫に受け継がれる。この「母性遺伝」という現象において、これまで母親由来のDNAを積極的に保護する機構の存在は着目されてこなかった。本課題では、緑藻クラミドモナスの葉緑体において、母性遺伝から父性遺伝への変換を引き起こす変異体を用いて、マイクロ流路を用いた顕微鏡解析や生化学的な解析を行うことで、母親由来のDNAを保護する新規の機構を明らかにしたいと考えている。
今年度は、父性遺伝への変換をもたらすタンパク質のDNA結合能の解析を行うため、大腸菌でリコンビナントタンパク質を調製して、ゲルシフトアッセイを行った。その結果、DNAへの結合に、タンパク質の変異の有無による影響は観察されなかった。このことは、変異体において、ただ単純に、タンパク質とDNAの親和性が変化した結果、適切にメスのDNAが保護できなくなっているわけではないことを示していると考えられる。 次に、このタンパク質と相互作用する因子との関係が変化している可能性を考え、相互作用因子の探索を行うこととした。この目的のため、クラミドモナスにおいて、大腸菌のビオチン-プロテインリガーゼを融合させたタンパク質を発現する株を作製した。さらに、この株において、細胞の接合過程や、葉緑体の母性遺伝への影響がほぼ見られないことを確認することもできた。現在ビオチン化タンパク質の精製に向けた条件検討を行っている段階ではあるが、この株を用いて相互作用因子を同定する下地が整ったと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、変異体における父性遺伝への変換原因の検討を行うとともに、DNAの選択的分解の様子を確認するため、マイクロ流路を用いた核様体動態を可視化する実験系の立ち上げを行う予定であった。核様体動態の可視化では遅れが見られるものの、遺伝学的、生化学的な解析では当初の予定よりも進んだ部分もあり、全体としては概ね順調に進んでいると考えている。特に、今年度は、これまでRNAiや相同組換えでは得られなかったノックダウン/ノックアウト変異体を、CRISPR-Cas9を利用したゲノム編集により得ることができた。今後はこの株も合わせて解析を進めたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ビオチン-プロテインリガーゼ-tag株において母性遺伝への影響がないことが確認されたため、この株を用いてビオチン化タンパク質をアフィニティー精製して質量分析を行う。相互作用因子が同定されれば、その因子に関して、雌雄での発現特性を調べるほか、変異体を取り寄せるか、遺伝子過剰発現株や抑制株の作製を行う予定である。また、DNAの選択的分解の様子を観察するため、マイクロ流路を用いて核様体動態を可視化したい。
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Causes of Carryover |
マイクロ流路を用いた実験系の立ち上げに時間がかかっているためであり、次年度に同実験での使用を計画している。
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Research Products
(8 results)