2020 Fiscal Year Research-status Report
厳密な母性遺伝を保証するメス由来のオルガネラDNA保護機構の解明
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18K14733
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田草川 真理 京都大学, 理学研究科, 特定研究員 (90711599)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 葉緑体 / クラミドモナス / 核様体 / cpDNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題では、緑藻クラミドモナスの葉緑体において、母親由来の葉緑体DNAが適切に遺伝するメカニズムを明らかにしたいと考えている。 今年度は、母性遺伝に影響を及ぼす可能性のある葉緑体に局在するタンパク質の変異体についての基本的な解析を行っていた。 ある1つのタンパク質の欠損変異体では、栄養細胞において葉緑体核様体(葉緑体DNAとタンパク質の複合体)のサイズが小さくなる傾向が見られていた。野生型とこの変異体の液体培地中での生育を比較したところ、細胞数の増加には特に違いは見られず、またその時の葉緑体コードの遺伝子のmRNA量も同等であった。このことから、少なくともこのタンパク質が細胞の栄養成長には関与しておらず、またこのタンパク質がもたらす核様体サイズの変化は、葉緑体の遺伝子発現には影響を与えないということがわかった。 以前の解析で、このタンパク質が葉緑体核様体に局在することがわかっていたため、葉緑体DNAのどのような配列に結合する傾向があるのか検討するため、クラミドモナスの葉緑体DNA上から、様々な特性を持つ12カ所の配列(プロモーター、UTR、CDS領域のGC含量10%~56%の配列)を選定して、リコンビナントタンパク質を用いてゲルシフトアッセイを行なった。その結果、選んだ全ての配列に同程度に結合したため、このタンパク質が明白な配列特異性を持たないことが明らかになった。これらの成果を含む変異体の性質やタンパク質の機能についてまとめた論文を投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス対応や機器の故障のために共焦点顕微鏡が使用不可になってしまったため、クラミドモナスの接合子における核様体動態を可視化する実験を行うことができなかった。また母性遺伝に直接関係するデータをあまり取ることができなかったと感じている。
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Strategy for Future Research Activity |
葉緑体母性遺伝に影響を及ぼすタンパク質の変異体に葉緑体DNAマーカーを導入した株を作製してあるので、これらを用いて様々なパターンでかけ合わせを行い、遺伝様式を詳細に検討していきたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス対応や機器の故障等のために研究が予定より遅れたこと、参加予定だった学会が延期になったりオンライン開催になったりしたために旅費がかからなかったこと、論文の審査に平常時よりも時間がかかっており、年度内に受理まで至らなかったため、投稿料を残しておく必要があったことから、研究期間の延長の必要性と次年度使用額が発生した。
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Research Products
(4 results)