2019 Fiscal Year Annual Research Report
ショウジョウバエ生殖系列における遺伝子量補償の欠如による自律的な性決定機構の解明
Project/Area Number |
18K14739
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
太田 龍馬 筑波大学, 生存ダイナミクス研究センター, 研究員 (00647969)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 生殖系列 / 性決定 / 遺伝子量補償 / X染色体 / ショウジョウバエ / 始原生殖細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、生殖系列の自律的な性決定機構の解明を目指し、ショウジョウバエを用いて研究を行った。私たちは、生殖系列の前駆細胞である始原生殖細胞(PGC)において、X染色体上の遺伝子発現の性差を補正する遺伝子量補償が欠如しており、オス(XY)とメス(XX)PGCでX染色体上の遺伝子の発現に差があることを明らかにしている。本研究では、このことに着目し、「遺伝子量補償の欠如によって生み出されるX染色体上の遺伝子の発現性差によって、生殖系列の自律的な性が決まるのか?」を明らかにすることを目的として研究を行った。 前年度までに、1)遺伝子量補償を担う、Male-specific lethal (MSL)複合体を構成する7因子のうち、Msl1、Msl2、Msl3、roX2の発現が、オスPGCにおいて観察されないこと、2)これら因子を強制発現したオスPGCでは、X染色体上の遺伝子の発現が上昇することを明らかにした。また、Msl1、Msl2、Msl3、roX2を強制発現させたオスPGCがメス化することを示唆する結果を得た。この結果は、X染色体上の遺伝子の発現性差により、生殖系列の性が自律的に決定されることを示唆している。本年度は、さらに、1) Msl1、Msl2、Msl3、roX2の強制発現では、オスPGCにおける完全なX染色体上の遺伝子の倍加が起こらないこと、2) これら4因子に加え、他の二つのMsl複合体因子の発現もオスPGCで観察されないこと、3) Msl1、Msl2、Msl3、roX2を強制発現させたオスPGCのメス化の頻度は非常に低いこと、も明らかとなった。これらの結果は、オスPGCにおける遺伝子量補償の欠如には、Msl1、Msl2、Msl3、roX2に加え、他の因子の抑制発現も関わることを示唆している。以上の成果は、生殖系列の自律的な性決定機構の解明に向けた重要な基盤となる。
|
Research Products
(1 results)