2018 Fiscal Year Research-status Report
広塩性モデル魚メダカを用いた、適応的進化の分子基盤の解明
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18K14740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高木 亙 東京大学, 大気海洋研究所, 助教 (90755307)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エピジェネティクス / 進化 / ATAC-seq / RNA-seq |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、多様な水圏環境に生息する真骨魚類の海水適応メカニズムについて、その背景にあるエピジェネティックな制御機構と、親世代での海水経験が次世代に及ぼす影響を解明することである。既に先行研究で一世代のうちに海水を経験したメダカはそうでない個体と比べて適応能が向上することが明らかになっているが、その背景にあるメカニズムは全くわかっていない。本研究では広く生理学研究に用いられる広塩性魚ミナミメダカの近交系Hd-rRII1を用いて、一定期間海水環境を経験させた個体と淡水しか経験してない個体、さらにそれぞれの実験群から産まれた次世代個体を用意した。当初の計画では初年度に、主要な浸透圧調節器官である鰓を用いて、ゲノムワイドな解析が可能なATAC-seq及びRNA-seq解析を行い、クロマチン構造に生じる変化と実際の遺伝子発現との関連を明らかにする予定であったが、Hd-rRII1の海水適応能が著しく低かったため、次年度に持ち越しとなった。d-rR系統を用いて同様のサンプルを準備中である。これまでにATAC-seqライブラリ調整に最適な細胞数、凍結組織と生組織による違いなどの条件検討を行い、作製手法を確立している。また、海水など環境変化によるストレス記憶が塩基配列の変更を伴わずに継承されるかどうかについても検証をおこなう予定である。本研究の成果から、多様な水圏環境へ進出し、繁栄してきた真骨魚の進化プロセスの一端を明らかにできるのではないかと期待している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ゲノム配列の均一性をもとめ、研究開始当初からゲノム解読にも用いられた近交系メダカHdrR-II1を用いて海水移行実験ならびにサンプルの準備を行ってきた。しかしながら、Hd-rRII1系統の塩分耐性は野生メダカや先行研究で用いられていたd-rR系統よりも低く、対照群として淡水のまま飼育していた個体と比較しての解析を十分に行うことができず、受託シーケンス解析をおこなうためのサンプル数も確保できなかった。一方で、鰓組織からのATAC-seq用のライブラリ調整については細胞数等の条件検討を終え、技術的には概ね確立することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
サンプルの準備に関して遅れが出ているものの、現在はより塩分耐性の高いことが知られるd-rR系統の繁殖を進めている。今後は個体数が確保され次第、当初の計画どおりATAC-seq解析、遺伝子発現解析、及び血漿パラメータの測定等を行う予定である。
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Causes of Carryover |
現在までの進捗状況に記載の通り、昨年度中はHd-rRII1系統を用いて飼育下で個体数を増やし、海水移行実験ならびにサンプルの採取を行ってきた。しかしながら、Hd-rRII1系統の塩分耐性は野生メダカや先行研究で用いられていたd-rR系統よりも低く、対照群として淡水のまま飼育していた個体と比較しての解析を十分に行うことができず、受託シーケンス解析をおこなうためのサンプル数も確保することができなかった。現在はより塩分耐性の高いd-rR系統の繁殖を進め、個体数を確保している。次年度はH30・31年度分として計上していた受託解析予算を用い、当初計画どおりにすべての解析を完了する予定である。
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