2019 Fiscal Year Research-status Report
造礁サンゴの初期石灰化過程に関わる遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
18K14745
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
安岡 有理 国立研究開発法人理化学研究所, 生命医科学研究センター, 研究員 (70724954)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 刺胞動物 / 変態 / バイオミネラリゼーション / 発生 / 進化 / PKS / 比較トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
【温度感受性実験】サンゴ初期胚発生過程の温度感受性を調べるため、ウスエダミドリイシサンゴ(Acropora tenuis)の胚を受精後16℃、21℃、26℃、31℃でインキュベートした。親個体の組み合わせを3種類用意して実験を行った結果、受精後3時間16℃もしくは21℃でインキュベートしただけで、胚発生に異常をきたすことが明らかとなった。一方、26℃および31℃でインキュベートした場合は特に問題なく発生した。これらの結果から、顕微注入実験も低温で行うべきではないことが判明した。 【遺伝子機能解析】Acropora tenuisの受精卵に、PKS, Galaxin, Galaxin2, Galaxin-like1, Galaxin-like2に対するアンチセンスモルフォリノオリゴを顕微注入し、初期石灰化過程におけるこれらの遺伝子の機能解析を行った。モルフォリノオリゴ注入後約2週間のプラヌラ幼生を変態させ、骨格形成をカルセインを用いて変態1日目および2日目で蛍光観察したが、コントロール胚と機能阻害胚の間で顕著な差は見られなかった。変態後15日目にポリプの軟組織を洗い流し、骨格標本として観察したが、そこでも大きな差は見られなかった。 【トランスクリプトーム解析】Acropora sp.1の胚(0, 16, 32, 56, 80hpf)、プラヌラ幼生(5dpf)、初期ポリプ(7hpm)、およびAcropora tenuisのプラヌラ幼生、初期ポリプ(1, 6hpm, 1, 3, 7dpm)のRNA-seq解析を行った。 【PKS遺伝子クローニング】Acropora tenuisのPKS遺伝子(約10kb)を初期ポリプcDNAからクローニングした。ゲノムから予測された遺伝子モデルの通り、脊椎動物PKS遺伝子と相同性のあるドメインが数多く見つかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウスエダミドリイシサンゴの受精卵を用いた遺伝子機能解析実験では芳しい結果を得られなかったが、沖縄で実験をし、サンプルを持ち帰って横浜で解析をするという一連の流れが確立できたので、今後の研究を推進する基礎が出来上がった。 2種のミドリイシサンゴを用いて、初期ポリプの形成過程を追ったRNA-seq解析ができたので、今後解析を進めることで初期石灰化過程に関わる遺伝子を効果的に絞り込むことが期待できる。 比較的大きなサイズのPKS遺伝子も問題なくクローニングでき、産卵期以外でも研究を進められるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウィルス感染拡大に伴い、沖縄へ出向いての実験は制限されてしまうが、プラヌラ幼生を入手して実験を行うことは可能なので、ポリプの観察方法の改善などを行う。 RNA-seqデータの解析を進め、初期ポリプの成長過程において顕著に発現が増減する遺伝子を割り出し、既知の石灰化関連遺伝子のプロファイルと比較することで石灰化関連遺伝子の更なる同定を目指す。 サンゴPKS遺伝子について、脊椎動物PKS遺伝子と機能的互換性があるかどうかをメダカのPKS mutant(耳石形成不全)に対するレスキュー実験で検討する。
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Causes of Carryover |
適正な予算執行のため、ごく少額を次年度使用額として繰り越した。
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Research Products
(8 results)