2018 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜張力がアクチンのパターン制御を通して管状組織の機械的強度を調節する
Project/Area Number |
18K14746
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
内田 清薫 (関根清薫) 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 訪問研究員 (00794398)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アクチン / 管状組織 / 上皮細胞 / 超解像顕微鏡 / ショウジョウバエ / 張力 |
Outline of Annual Research Achievements |
生体の管構造を支持する細胞内骨格パターンとして、リング状のアクチン繊維が等間隔に配列する現象が報告されている。管状上皮であるショウジョウバエ気管では内径拡張時、内腔側の細胞膜直下に等間隔アクチンリングが出現し、個体の成長に応じてリングの直径と間隔が拡張する。本研究は、この等間隔アクチンリングの形成・調節機構の上流には細胞膜にかかる張力があるという仮説に基づいて行っており、①等間隔アクチンリング形成過程のアクチンパターン、②等間隔アクチンリング形成・調節に必要なアクチン結合分子・膜脂質、③気管アピカル膜にかかる張力によるアクチンパターン及び管構造強度への影響、④ほ乳類培養細胞系での検証、の4点に着目した研究実施計画を立てた。 本年度は、上記の①について、超解像顕微鏡技術(Zeiss社のAiryscan)を用いて気管の拡張前後におけるアクチンパターンの遷移を詳細に観察し、定量的に解析する手法を構築した。その結果、気管拡張前は管の長軸方向を向いていた斑点状のアクチンの集合体が、管の拡張とともに周長方向へ向きを変え、次第に長くなりながらアクチンケーブルを構成し、リングになることが明らかとなった。また、各々のアクチン集合体の移動度および移動方向を定量し、それぞれが気管という組織の方向を感知するシステムあるのではないかという示唆を得た。 ②について、ショウジョウバエのゲノムからアクチン結合分子と推定されている全遺伝子を候補として、アクチンリングに必要とされる遺伝子をRNAi発現系統を用いて網羅的に探索した結果、16の重要な分子を同定した。RNAi系統によるノックダウン時の表現型を比較することで、気管の拡張とアクチンパターンの関係が整理できると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の①等間隔アクチンリング形成過程のアクチンパターン、②等間隔アクチンリング形成・調節に必要なアクチン結合分子・膜脂質、③気管アピカル膜にかかる張力によるアクチンパターン及び管構造強度への影響、④ほ乳類培養細胞系での検証、の4点のうち、①と②に関しては計画通り遂行できている。②では、さらにそれぞれの分子の局在を調べるため、GFP融合系統をショウジョウバエ系統ライブラリーから取り寄せるか、もしライブラリーに無い場合はGFPを融合したタンパク質の発現系統を作製中である。GFP融合タンパク質発現系統と、RNAi発現系統を組み合わせることで、③へ効率的なアプローチが可能になると考えられる。②の膜脂質に関しては既存のマーカーの輝度が低く、種類も少ないため、まだ信頼のおけるデータが得られていないが、こちらも得られたアクチン結合分子から候補の膜脂質を絞り、検証していきたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、①等間隔アクチンリング形成過程のアクチンパターン、についてアクチン集合体のダイナミクスの定量的な解析を進め、終わらせる。②等間隔アクチンリング形成・調節に必要なアクチン結合分子・膜脂質、については、スクリーニングで同定された必須のアクチン結合分子のGFP融合系統を用いて、それぞれの分子がアピカル膜上のどこで機能しているかを調べ、張力感知システムとして考えられる分子機構を想定する。そして③気管アピカル膜にかかる張力によるアクチンパターン及び管構造強度への影響、に関してアクチンパターンを乱した時の管構造を検証し、その強度を推定する。また、全長の短い変異体や、一部の筋肉活動を阻害して張力のかからない状況にした際に、管構造およびアクチンパターンがどのように変化するかを検証する。 3年目は、④に関して、②③で想定された分子機構が、ほ乳類細胞に保存されているかどうかを検証する。得られた結果を論文としてまとめ、国内外の学会で発表する。
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Causes of Carryover |
購入予定だったコンピューター及びソフトウェアは、在籍する研究室のものを使用できたため、購入を見送った。また、スクリーニング補助員の雇用に関しても、所属先の雇用する補助員に協力を仰ぐことができたため、今年度は予算を使用しなかった。翌年度の使用計画として、改めて実験補助員の雇用費として、加えて合成DNAや、ショウジョウバエ変異体系統の作製に使用する予定である。
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[Journal Article] Nanopore Formation in the Cuticle of an Insect Olfactory Sensillum2019
Author(s)
Toshiya Ando, Sayaka Sekine, Sachi Inagaki, Kazuyo Misaki , Laurent Badel, Hiroyuki Moriya, Mustafa M. Sami, Yuki Itakura, Takahiro Chihara, Hokto Kazama , Shigenobu Yonemura, Shigeo Hayashi
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Journal Title
Current Biology
Volume: 29
Pages: 1512-1520
DOI
Peer Reviewed
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