2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞膜張力がアクチンのパターン制御を通して管状組織の機械的強度を調節する
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18K14746
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
内田 清薫 (関根清薫) 東北大学, 生命科学研究科, JSPS特別研究員(RPD) (00794398)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アクチン / 管状上皮 / 超解像顕微鏡 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、等間隔アクチンリングが形成する過程を超解像顕微鏡イメージングにより詳細に観察した。アクチンリングが形成される前段階として、クラスター状のアクチン集合体が離散的に現れた。このクラスター状アクチンにはミオシン、ROCKが共局在し、非常に激しく形を変化させていることも確認した。また、アクチンの動態を正確に捉えるため、0.32秒/frameの速いイメージングを行い、個々のクラスターが異方性のある動きをすることを見出した。さらに、クラスター同士が周径方向に優位に融合安定化されることも明らかとなった。 また、2)について昨年度同定された、アクチンリング形成に必要とされる遺伝子について、それらの表現型を定量するとともに局在を確かめた。その結果、Zasp52のRNAi発現個体は特に強い表現型を示し、アクチンクラスターに共局在することが認められた。さらに、zasp52をノックダウンした条件では、クラスター動態に見られた異方性が失われることも明らかとなったため、このアクチンクラスターの形成・成熟化にはzaspの機能が必要であることが示された。 上記のクラスター形成および縞パターン形成を、共同研究により数理モデル化することで、アクチン、ミオシン、クロスリンカーの関係の包括的な理解を目指している。 以上の結果により、気管アピカル面における等間隔アクチンリングの形成には、離散的に現れるアクチン集合体が前駆体となっており、これらが予めほぼ同程度の間隔で生じてくることが、後の規則的なパターン形成に寄与していると考えられる。また、アクチン集合体にはZasp52が共局在することで、気管の軸情報を何らかの方法で感知していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まずは等間隔アクチンリングが形成する過程を、予定通り超解像顕微鏡で観察し、定量的な解析を行うことができたため。当初は想定していなかった、クラスター状アクチンの形状や動態を定量的に評価するため、新たな解析方法を試行錯誤の上、開発した。その結果、微小な動態に異方性があることを見出すことができた。 また、RNAiスクリーニングにより同定された分子群から、クラスター状のアクチン形成に特に重要な分子を見出し、その必要性を検証できた。Zasp52は通常は筋肉のZ-discに局在する分子なため、気管上皮細胞で中心的な役割をすることは意外であった。今回の発見は、Zasp52の新たな機能の理解につながると考えられる。 さらに、アクチンのパターン形成およびスクリーニング結果から、重要な分子群が抽出されたことで、正確な数理モデルを立てられることが期待され、共同研究が立ち上がった。アクチンがクラスター化する過程はシミュレーションによってすでに再現されており、クラスター化およびリング化の諸条件を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
数理モデルのシミュレーションに基づき、各種の条件(アクチン、ミオシン、クロスリンカーの量やターンオーバーを操作した際のアクチンの挙動)を実験的に確かめた上で、これまでに得られた結果を論文にまとめて発表する。特に、シミュレーションによると、クロスリンカーのターンオーバーが離散的なクラスター形成に必要であることが示唆されたため、actinin-GFPのターンオーバーをFRAPにより検証する。また、actinin結合タンパク質でかつアクチンとも結合することの知られているZasp52が、actininのターンオーバーを制御するのではないかという仮説のもと、zasp52をノックダウンした条件でのactininのターンオーバーを検証する。数理モデル主体の論文も作成したいという共同研究者の話もあるので、そちらの研究にも必要に応じて実験をすることで貢献する。
アクチンクラスターがZasp52の機能依存的に軸情報を感知する仕組みについて、検討する。筋肉では、張力を感知して筋原繊維の配向を張力がかかる方向に揃えるという仕組みが報告されている。気管上皮細胞でも、似たようなメカニズムが働いていないか検証する。また、リング状のアクチンを形成するには、細胞間でアクチンケーブルが連結されるように特殊なjunction構造を作ると想定されるが、その候補として筋肉細胞の細胞境界で見られるtransitional junctionが形成されていないか観察する。これらの結果により、Zasp52によって形成されるアクチン集合体は、個々が弱い張力を感知して向きを変えることのでき、しかも特定方向へ細胞を越えて連結可能なユニットであることを提唱する。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナウイルス蔓延のため、研究室での実験と、自宅での解析および考察というスタイルで研究を行った。それまでに取得したデータの解析が進んだ一方で、実験にかかる費用は抑えられ、申請者の他の予算(学振RPDの研究奨励費)及び受入研究室の支援もありほとんど予算を使う必要が無かった。また、理研BDRから東北大学への申請者の異動があり、その前後は使用を控えた。 2021年度は、異動に伴い不足するものがあるので、これまでの実験の継続に必要な器具・消耗品等の新規調達に予算を使用する。また、培養細胞と円柱状のガラスシリンダーを用いた新しい実験系の構築、及びトランスジェニックショウジョウバエの作製に使用予定である。また、論文投稿費、及び学会参加費が生じた場合はそれらにも充当する。
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Research Products
(1 results)