2020 Fiscal Year Annual Research Report
長期連合記憶におけるシナプス可塑性の電気生理学的解析とその分子メカニズムの解明
Project/Area Number |
18K14747
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
清水 一道 東京大学, 定量生命科学研究所, 助教 (50808095)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / 電気生理学 / 記憶・学習 / カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
ショウジョウバエにおける記憶・学習過程ではキノコ体が中心的な役割を果たす。キノコ体を構成する神経細胞群にはケニオン細胞(KC)やその下流のキノコ体出力神経細胞(MBON)、ドーパミン細胞(DAN)などがあり、またMBONのさらに下流にはDorsal Anterior Lateral neuron(DALn)がある。近年の研究により、記憶形成に関わるシナプス可塑性がKC-MBON間やMBON-DALn間のシナプスで示唆されているが、それが前/後シナプス細胞のどちらに起因するかはわかっていない。本研究ではパッチクランプ法を用いた素量解析を行うことによりシナプス放出のパラメータが記憶形成前後でどのように変化するかを解析し、シナプス可塑性の細胞内における局在を明らかにすることを当初の目的とした。この方法ではシナプス前後細胞の両方からパッチクランプ記録を行う必要があるため、ともに遺伝学的に標識することが可能であるMBON-DALn間のシナプスを解析の対象とした。しかし、DALnの前シナプス細胞であるMBON-β'2mpとMBON-α3のいずれからも本研究の素量解析に必要な活動電位の発生が見られず、MBON-DALn間のシナプスを解析対象とすることが困難であることが判明した。 そこで昨年度よりKC-MBON間のシナプス可塑性のカルシウムイメージングによる解析を開始した。無条件刺激を光遺伝学で代替する記憶形成プロトコルにより後シナプス細胞であるMBONの匂い応答の抑制が示されており、この可塑性が前シナプス終末に起因するのであれば、KCのシナプス終末におけるカルシウム応答の抑制が予測される。これに基づき最終年度はカルシウムイメージング用のショウジョウバエ系統を作成し、一部の匂いでKCの軸索末端におけるカルシウムシグナルが可塑的に変化するという予備的な結果が得られている。
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