2018 Fiscal Year Research-status Report
Neurobiological analysis of mechanisms for measurement of day length and number of the days in photoperiodic clock
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18K14748
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
長谷部 政治 大阪大学, 理学研究科, 助教 (40802822)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 光周性 / 概日時計 / PDF / 電気生理学 / 免疫組織化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの動物は、日長変化の情報を正確に感知・処理することで、季節変化に適応している。この日長変化に対する生理応答は光周性と呼ばれる。体内において、約24時間周期の概日時計をもとに、日長変化とその日数を計測・蓄積する光周時計が存在することが示唆されているが、その神経機構の実態は不明瞭である。この神経機構を明らかにするために、昆虫の概日リズム形成に重要であり光周性制御への関与も示唆される脳副視髄(AMe)の神経細胞群に注目し、ホソヘリカメムシを用いて解析を進めている。 当該年度において、このAMe神経ネットワークについて、AMeに局在する神経ペプチド: pigment-dispersing factor(PDF)ニューロンを中心に、免疫組織化学法を用いて形態学的な解析を行った。PDFとセロトニンに対する二重免疫組織化学により、AMeにおいて半数以上のPDF免疫陽性細胞はセロトニンを共発現しており、PDF免疫陽性細胞の周辺にもセロトニン免疫陽性細胞が局在することがわかった。さらに、背側前大脳においてPDF免疫陽性バリコシティとセロトニン免疫陽性バリコシティが近接して局在していた。また、PDF・FMRFamideの二重免疫組織化学により、PDF免疫陽性細胞の近傍にFMRFamide免疫陽性細胞が見られると共に、一部のPDF免疫陽性細胞においてFMRFamideが共発現していることがわかった。 形態学的な解析と並行して、AMe神経細胞群における神経活動レベルでの日長応答について、電気生理学的な解析に取り組み始めている。しかし、AMeニューロンの細胞サイズが想定よりも小さく、安定した神経活動記録には成功していない。一方で、光周時計からの日長情報を受容し、光周性制御の出力系を担うと考えられている神経分泌細胞群は、細胞体サイズが大きく、予備的な実験であるが神経活動記録に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度で予定していたAMe神経ネットワークの形態学的解析について、PDFとセロトニン・FMRFamideの二重免疫組織化学による標識より、AMeにはPDF・セロトニン・FMRFamide免疫陽性細胞が近接して局在し、一部のニューロンはこれらの複数の神経伝達物質を共発現していることが示唆された。この解析結果より、PDFニューロンを中心としたAMe神経ネットワークの一端が明らかになり、一定の成果が得られたと考えられる。 本年度は、次年度に向けてAMeニューロンからの神経活動記録の実験系を確立する予定であったが、予想よりもAMeニューロンの細胞サイズが小さく、形態的にアプローチが難しかったため、安定した神経活動記録ができていない。一方で、光周時計から日長情報を受け取り、光周性神経機構の出力系を担っていると考えられている神経分泌細胞群は、細胞体サイズが大きく比較的アプローチが容易であり、神経活動記録に成功している。そのため、次年度以降はAMeニューロン自体ではなく、その出力先と考えられる神経分泌細胞群(脳側方部:PLニューロン等)を対象とした解析も検討している。 上記のように形態学的な解析については一定の成果が得られたが、電気生理学的解析については記録対象ニューロンを変えるなど一部計画変更の可能性が出てきており、総合的に進捗としてはやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度解析を行ったセロトニン・FMRFamideに加えて、グルタミン酸・GABAといったその他の神経伝達物質に関して、PDFとの二重免疫組織化学を引き続き行い、AMeの神経ネットワークに関する形態学的な解析を継続して行っていきたい。 神経活動レベルでの日長応答に関して、当初の予定であったAMeニューロン群からの神経活動記録については、形態的にアプローチの難易度が高い可能性がある。その場合には、細胞体サイズが大きくアプローチが比較的しやすい、光周時計からの情報を受容していると思われる光周性機構の出力系を担う神経分泌細胞からの神経活動記録を行う。AMeもしくは神経分泌細胞の自発神経活動について、長日・短日条件下で飼育したホソヘリカメムシで比較し、日長条件に応じた神経活動レベルでの応答があるかを解析する。 また、神経活動レベルでの日長応答が見られた際に、その日長応答に体内の概日時計が関与しているかについても解析する。方法として、概日時計遺伝子をRNA干渉法によりノックダウンし、それらのノックダウン個体で、各日長条件下での神経活動を電気生理学的手法を用いて解析する。コントロール個体の解析結果と比較し、概日時計遺伝子と神経活動レベルでの日長応答の関係性を明らかにしたい。
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Research Products
(1 results)