2019 Fiscal Year Research-status Report
The mechanism of temperature compensation in circadian clocks
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18K14749
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊藤 太一 九州大学, 基幹教育院, 助教 (20769765)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 概日リズム / 温度補償性 / ショウジョウバエ / 時計遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
概日リズムには環境温度に関わらず周期が約24時間で安定に保たれる「温度補償性」が備わっている。本研究ではすでにショウショウバエにおいて時計遺伝子 PERに対する翻訳制御因子のTYFとLSM12の欠損系統が概日リズム温度補償性に異常を示すことを発見している。 本年度では、既存の様々な時計遺伝子変異体と本研究において発見した温度補償性異常を示すLSM12欠損系統の二重変異体の作製を実施した。これら系統における温度変化による行動周期性の変化を観察することで、温度補償性が概日リズム形成のどの階層において生じるものなのかを遺伝学的に検討した。その結果、LSM12欠損系統における温度補償性異常は、時計遺伝子PERの変異体の下では観察できなくなった。これは、温度補償性異常がLSM12のPER以外への作用から生じているわけではなく、PERとの相互作用段階において生じているためだと考えられる。 また、温度変化によるPERの翻訳効率とTYF・LSM12の関係性を培養細胞を用いたアッセイ系で実施した。様々なバリエーションで断片化したTYFタンパク質を培養細胞に強制発現させ、高温・低温の条件下においてPERタンパク質の発現量がどの様に変化するのかを調べた。その結果、TYFの特定領域のみがPERタンパク質の翻訳において温度依存的な機能変化を生じる可能性を突き止めることができた。その領域はLSM12 との相互作用が示唆されているため、本結果は概日リズム温度補償性にはTYF/LSM12を介したPERの翻訳が深く関与していることを裏付けるものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた培養細胞のアッセイ系を確立することができ、その結果も出始めている。また、様々な新規変異体の作製も着実に実行できている。得られた結果も当初考えていた仮説を支持するものとなっており、予定を大幅に変更することなく順調に計画を実施できている。
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Strategy for Future Research Activity |
確立した培養細胞系におけるアッセイ系を用いて、温度変化によるPERの翻訳効率変化とTYF・LSM12の関係性をより詳細に検討する。具体的には、免疫沈降法を用いることで、温度変化におけるTYF・LSM12の結合の変化について検証する。 温度補償性異常を示すPERコドンを変化させた系統におけるPERの免疫組織染色を行い、既に終了した温度補償性異常を示すTYF・LSM12の免疫組織染色結果と比較することで、TYF・LSM12を介したPERの翻訳が温度補償性の鍵になっているかどうかを検証する。
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた出張を見送ったことと、本研究をサポートするための適任な人材が確保できなかったため、旅費と人件費において差額分が生じた。 本年度予定していた出張は次年度において実施する計画である。また、実施する予定の実験試薬類の補充に当てる予定である。
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