2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K14754
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
八杉 公基 宇都宮大学, 工学部, 研究員 (50722790)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 魚類 / 行動 / 認知 / バーチャル生物 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、3次元コンピュータグラフィックスで作成したバーチャルメダカの向きがメダカの同種他個体に対する接近反応にどのように影響するかを調べた。もし水槽内のメダカに対してバーチャルメダカが横向きに泳ぐ/こちら向きに泳ぐことでメダカの接近反応に違いが見られるのであれば、提示する映像内のバーチャルメダカの向きは偏りなく同一の条件に揃える必要がある。これは、今後の行動実験の結果の頑健性および再現性を保証する際に重要となるため、優先して検討すべき事項とした。バーチャルメダカが横向きに泳ぐ/こちら向きに泳ぐという2群の比較に加え、運動要素を段階的に削除したバーチャルメダカを用いた検討を行うことで、バーチャルメダカの向きそのものがメダカの接近反応に影響を及ぼすことを示したが、残念ながら投稿論文は「実験不十分」との判断で受理されなかった。そのため、向きを横向きからこちら向きまで30度ずつ変更した、合わせて5パターンのバーチャルメダカを準備し、メダカの接近反応の違いを検討した。 上記実験では照明条件などの検討を重ね、試行ごとの微調整の必要なく、撮影したメダカの接近反応の動画から半自動的にROI(Region of interest, ここではバーチャルメダカを提示するディスプレイ前の関心領域)内のメダカ出現頻度を算出することを可能にした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
予備実験から、本研究で注目する「動き」以外の要因で実験結果が左右される可能性が生じたため、優先すべき検討事項として、バーチャルメダカの向きがメダカの同種他個体に対する接近反応に与える影響を明らかにするための行動実験を進めた。こちらの実験を進めるにあたって予想外に時間を要しているが、その理由として①4、5月に新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に伴い在宅勤務が要請され、それまで飼育・維持していた環境が白紙となったこと、②今年度も引き続き本研究に割けるエフォートが10%と当初の予定より大幅に減少し、①の状況からの復帰と行動実験の準備に日を要したこと、が挙げられる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進めているバーチャルメダカの「向き」に注目した実験は、結果が揃い次第論文としてまとめて投稿する予定である。データの取得方法や解析方法は、今後のこの分野のスタンダートとなることを目指して検討を重ねている。 側面から見た魚類のシルエットから体軸推定を行う手法については、引き続きPython + OpenCVによる画像処理と、深層学習を利用した輪郭検出の2面から検討を進めており、映像からの体軸の推定精度の向上と自動取得化が実現され次第、最終年度での実装を目指す。以降は申請した内容に従い、メダカ・キンギョ・オヤニラミの遊泳行動を2方向から撮影し、水槽内の空間位置と体軸の3次元座標構築を行うことで、3種のバーチャルフィッシュを作成して動きを制御する。互いに運動要素を入れ替えたバーチャルフィッシュに対するメダカの反応を比較することで、相手の動きに含まれるどのような要素がメダカの接近行動の誘発に寄与しているかを特定し、その要素が持つ詳細な情報(種間差、性差、生物らしさなど)を明らかにする。
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Causes of Carryover |
予備実験によって、申請時には想定していなかった体軸推定を行う上での問題および本研究での注目形質以外の実験結果への影響が確認されたため、そちらの問題解決を優先し、計画していた行動実験はまだ進められていないため。加えて、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に伴う在宅勤務や新規実験への制限がスケジュールを大幅に遅らせている。 最終年度は当初の計画に上記2点の課題解決の内容を加えた成果発表を行う予定であり、実験費用および論文出版費用として使用する。
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