2018 Fiscal Year Research-status Report
エピジェネティックな機構と植物ゲノムの共進化:DNA脱メチル化酵素の進化解析
Project/Area Number |
18K14758
|
Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
吉田 貴徳 京都産業大学, 総合生命科学部, 研究助教 (10611642)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | エピジェネティクス / ゲノム進化 / 植物 / 脱メチル化酵素 / ゲノムショック |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物のゲノムサイズや染色体構成などに見られる多様性がなぜ生じて、維持されているのかは未解明であるが、近年ゲノム進化に影響する要因としてエピジェネティックな制御機構が注目されている。植物はゲノム多様性がとりわけ高く、ゲノム進化を研究するための良い研究対象である。また、種間交雑や倍数体化など、植物に多くみられる進化的現象に着目することで、これらが植物ゲノムに及ぼす「ゲノムショック」とそれに対するエピジェネティックな制御機構の進化を観察できると考えられる。本研究では、DNAを脱メチル化する酵素をコードする遺伝子に着目し、その分子進化パターンについて解析している。また、モデル植物シロイヌナズナの近縁種でゲノム三倍体化しているBrassica rapaを用い、種子発生時のsmall RNA発現とDNAメチル化状態の解析を行う。今年度は、陸上植物のゲノム情報を用いて、種子発生時に働くDNA脱メチル化酵素DME、およびそのホモログである他の脱メチル化酵素の分子進化を解析した。遺伝子に含まれる3つのドメイン構造に着目して、それぞれの分子系統樹を作成したところ、ドメインにより異なる進化をしていることが示唆された。また、small RNA解析のために、Brassica rapaの種子を分画して得られた胚乳や胚などからsmall RNAを抽出した。現在、大規模シークエンス解析のためのライブラリを作成している。さらに、今年度は関連する研究結果について、3報の論文を筆頭著者として投稿し、受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、Brassica rapaの発生途中の種子を分画し、small RNAを抽出してNGS解析のためのライブラリ作成を進めた。分画された胚、胚乳からのRNA抽出で、small RNA、lnc RNAの解析を行う上で十分な量のRNAを抽出することができた。Illuminaシークエンサーによる解析のためのライブラリの作成は順調に進んでおり、2019年度にはシークエンスを行い、発現データを解析できる予定である。また、種子のメチローム解析を行うための準備も進めている。分子進化解析については、陸上植物のゲノムデータから代表的な種を10種選定して解析した。DME-ROS1遺伝子グループの3つのドメイン分子系統樹で異なるパターンを示したことから、この遺伝子グループがドメイン間で異なる進化をしながら機能分化を果たしている可能性がある。 また、今年度は本研究に関連する研究成果について、筆頭著者として3つの論文を発表した。Brassica rapaの胚乳での遺伝子発現をRNA-Seqにより解析し、ゲノムインプリンティングされている遺伝子を同定して進化解析を行った論文を発表した。またそのほかに、交配がDNAメチル化修飾の多様化に及ぼす影響について報告した論文などを発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2018年度に進めたsmall RNA-Seqのライブラリ作成を継続し、2019年度前半にシークエンスを行い、データを取得する。得られたデータを用いてバイオインフォマティック解析や進化解析を行い、結果をまとめて論文投稿の準備をする。また、胚乳でのメチローム解析に用いる試料を得るために、Brassica rapaの2系統の交配を行う。十分な試料を得られたら、DNAを抽出してメチローム解析のライブラリを作成する。DME-ROS1遺伝子グループのデータ解析については、被子植物のゲノム情報を用いて、分子進化パターンを詳細に解析する。
|
Causes of Carryover |
研究の進展に伴い計画を変更した。今年度は国際誌への論文発表に優先的に研究時間を割いた。そのため、当初計画に予定していた実験・解析の一部を次年度に延期した。 計画の変更に伴って2019年度に実施する実験・解析の物品を購入する。また、学会で研究成果の発表を行う旅費に用いる。論文を投稿する場合は、投稿に必要な経費として使用する。実験の一部(単純作業等)を、アルバイトを雇用して行う可能性がある。その場合は人件費・謝金として使用する。
|