2018 Fiscal Year Research-status Report
ゼブラフィッシュを用いた情動に基づく行動・学習に必須な脳領域の遺伝学的研究
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18K14759
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
小谷 友理 国立遺伝学研究所, 遺伝形質研究系, 特別研究員(PD) (00783119)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゼブラフィッシュ / 扁桃体 / 情動 / 行動解析 / 遺伝子 / 遺伝学 |
Outline of Annual Research Achievements |
扁桃体は、不安、恐怖などの感情を司り、また、それらの感情を経験した場所、条件などを記憶・学習する(恐怖条件付け学習)ために必要な脳領域である。神経毒を特異的に発現させる結果から、魚類では、終脳の背側中央部(Dm)が恐怖条件付け学習などに関与する脳領域として知られている。しかし、Dmは広大な領域であり、Dm内の機能的な神経細胞群・神経回路は未だ解明されていない。私は、恐怖条件付け学習に必須なDm領域に特異的に発現する遺伝子に着目し、分子生物学的・遺伝学的解析を用いて以下の研究を行った。(1)Dmに特異的に発現する遺伝子の機能欠損変異体をCRISPR/Cas9法によりゼブラフィッシュを用いて作製した。(2)Dmに特異的に発現する遺伝子の機能欠損変異体では、神経毒による先行研究とは異なり恐怖条件付け学習に影響しないことを明らかにした。(3)Dmに特異的に発現する遺伝子の機能欠損変異体を用いたRNA-sequenceを行い、変異体において発現が増減する遺伝子の網羅的な探索を行った。(4)不安、恐怖など情動に基づく行動を観察するための行動解析システムを立ち上げた。Dmに特異的に発現する遺伝子の機能欠損変異体において、情動に基づく行動に影響があるかどうかをこれらのシステムを用いて解析している。(5)Dmに特異的に発現する遺伝子の機能欠損変異体を用いた解剖学的な解析から、Dm領域の神経回路・神経細胞群に対する影響を観察した。(6)Gal4-UASシステム、CRISPR/Cas9法を用いて、Dm特異的に発現する遺伝子の遺伝子トラップラインを作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)RNA-sequenceの結果から、情動に基づく行動に関与することが報告された複数の遺伝子を候補として得ることができた。 (2)不安関連行動解析である新規タンクアッセイ、明暗嗜好アッセイ、恐怖関連行動解析であるスキンエクストラションアッセイ、社会行動アッセイシステムの開発を行った。機能欠損変異体がこれらの行動に影響するかどうかを解析が進んでいる。 (3)機能欠損変異体を用いた解剖学的な解析から、Dm領域の神経回路・神経細胞群において影響が見られたため、免疫染色法を用いて詳細な解析を行っている。 (4)Dmに特異的に発現する遺伝子のexon1に対してGAL4遺伝子を挿入したトラップラインを作製した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)RNA-sequenceの結果から得られた遺伝子に対し、定量PCRにより遺伝子発現量の確認を行い、In Situ ハイブリダイゼーションにより発現部位・領域の解析を行う。 (2)機能欠損変異体が情動に基づく行動に関与するかどうかを開発したシステムで明らかにする。 (3)機能欠損変異体によって影響するDm領域の神経細胞群の種類を、マーカー遺伝子などを用いて同定する。 (4)exon1に対するトラップラインではGal4の発現量が弱かったため、標的部位をうつしたトラップラインを作製している。
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Causes of Carryover |
研究所、研究室の実験機器、試薬を使用することができたため、安価に抑えることができた。計画していた出張が実験計画のためとりやめになった。ソフトウェアのライセンス使用料を計上していたが、無料期間の適用が認められた。 去年度不使用分の費用に関して、今年度、新たな実験・解析システムの導入を考案中であり、それらに捻出する予定である。
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