2018 Fiscal Year Research-status Report
冠輪動物特異的転写因子に着目したらせん卵割型発生の進化機構の解明
Project/Area Number |
18K14762
|
Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
守野 孔明 筑波大学, 生命環境系, 助教 (20763733)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
|
Keywords | らせん卵割型発生 / 系統特異的転写因子 / 遺伝子制御ネットワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、系統特異的転写因子であるSPILE遺伝子群が発生の秩序を保ったまま遺伝子制御ネットワークに挿入され新規発生様式を制御するようになった進化過程の解明を目的とし、具体的には以下のようにSPILE遺伝子群の上流と下流のそれぞれに着目して研究を進めている。材料は典型的ならせん卵割型発生を示す軟体動物腹足類のクサイロアオガイ(Nipponacmea fuscoviridis)を用いている。<1> SPILEの上流|SPILEの割球特異的な発現を制御する因子として、βカテニン経路に着目し、薬剤処理もしくはΔ-カドヘリンの注入による機能阻害/亢進を行った。その結果、SPILE遺伝子群の発現パターンはβカテニン経路を亢進/阻害したとき、動物-植物軸に沿って発現が拡張もしくは縮小/消失することが明らかになった。このことは、SPILE遺伝子群の発現制御はβカテニンによってなされていることを示唆する。 <2> SPILEの下流|SPILE遺伝子のターゲット遺伝子を同定するため、32細胞期前後に発現を始める転写因子を網羅的に把握することを目的として、卵から幼生期8ステージにわたる時系列トランスクリプトームを行った。得られたリードを用いてアセンブリ(Trinity)によるリファレンスの作成と発現量解析 (Rsem)を行い、32細胞期前後に発現が始まる転写因子群を同定した。これらのうち実際にOtx、GATA4/5/6、FoxN2/3といった遺伝子が実際に割球特異的な発現を示し、かつ幼生期には部位特異的な発現を示すことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り、βカテニン経路の阻害/亢進や、時系列トランスクリプトーム解析によって上流/下流因子が同定されてきており、おおむね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
<1> βカテニン経路がSPILE遺伝子の発現を制御することは明らかになったが、両社の関係を明確にするには、βカテニンの局在パターンを知る必要がある。今後、βカテニン-Flag融合mRNAのインジェクションによって、βカテニンの局在パターンを解析していく予定である。 <2> 同定された下流候補因子のin situ hybridizationを進めていく。また、一部についてはモルフォリノによる機能阻害を行い、幼生形態への影響を調べる。
|