2019 Fiscal Year Research-status Report
被食ー捕食ー超捕食系における進化的軍拡競争の微生物実験進化系による解析
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18K14763
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
山本 京祐 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (70636472)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 生態‐進化フィードバック / ミクロコズム / モデル系 / 進化動態 / 捕食性細菌 / バクテリオファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に確立した被食者(大腸菌)、捕食者(Bdellovibrio bacteriovorus)、超捕食者(B. bacteriovorus感染性ウイルス)の3種を用いた二者および三者混合連続培養系を用いて新たに進化実験を実施し、進化動態を解析した。5週間に亘る培養期間中いくつかの時点で捕食者および被食者を系から単離し、祖先株および単離株間の競合・捕食実験(タイムシフト実験)等によって捕食能とそれに対する防衛能の変化を定量的に解析した。被食者の個体数(濁度)減少速度を指標として導入し捕食能および防衛能の変化を評価したところ、培養中期由来の被食者は祖先型の捕食者から捕食されにくくなっている一方で、培養後期由来の捕食者からは捕食されるようになっており、被食者における一定の捕食防衛能の進化およびそれに対する捕食者側の対抗進化が示された。また、培養終了時の集団ゲノム解析を実施し、それらの表現型変化に寄与すると考えられる遺伝的変異を複数同定した。その後、進化実験を再度実施し、構成種の個体群サイズを経時的に測定することで群集動態を解析した。被食者と捕食者の二者培養系においてはそれぞれの個体数が振動しつつ共存する典型的な捕食者‐被食者ダイナミクスが観察されたが、10週間に亘る培養期間の初期、中期、後期でそれぞれ異なった個体数変動パターン(周期・振幅)を示し、実験期間中の進化が群集動態に大きな影響を及ぼすことが示された。さらに、三者系においては二者系とは異なる個体数変動パターンの推移がみられたことから、生態プロセスの変化が進化プロセスに影響を与えていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の主な目標であった混合培養系における群集動態および進化動態の解析を実施し、期待された結果が得られているため。これまでに得られた実験結果や進化株を詳細に解析していくことで今後も円滑な研究遂行が可能と予想される。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までに得られているデータや進化株をより詳細に解析することで、観察された群集動態を駆動する進化現象とその遺伝学的基盤を明らかにしていく。個体数変動データから群集動態の特徴づけを進める一方で、進化株の表現型・遺伝型解析を実施する。特に、超捕食者の特徴づけを優先的に進める。必要に応じて進化実験を再試行し、より大きな個体数変動・表現型変化データを解析に供する。
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Causes of Carryover |
長期培養実験と表現型解析試験について既存設備と比較的安価なマテリアルで実施できたことが理由として挙げられる。生じた次年度使用額の大部分は、培養設備の拡充や大規模な塩基配列の外注分析に使用予定である。
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