2018 Fiscal Year Research-status Report
比較進化学的手法を用いた警報フェロモンの機能分化が社会性進化に与える影響の検証
Project/Area Number |
18K14765
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
服部 充 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 助教 (80710095)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 進化生態学 / 真社会性 / アブラムシ / 警報フェロモン |
Outline of Annual Research Achievements |
生物の社会性がどのように維持されているかという疑問に答えることは、生態学分野において最も重要な命題の一つである。この命題に対し、先行研究は情報化学物質の存在とその利用が重要であると示唆してきた。しかし、限られた分類群(主にアリ・ハチ類、シロアリ類)を中心に研究が進められてきたため、他の分類群での研究が求められている。そこで、社会性が情報化学物質の一種である警報フェロモンによって強調される社会性アブラムシを用いて、情報化学物質の利用の詳細を解明し、物質同定を行う。これにより生物一般における社会性維持に情報化学物質の存在と利用がキーファクターであることの理解を深めることが本研究の目的である。本研究を遂行するためには、複数の社会性アブラムシにおいて警報フェロモンの有無を確かめる必要がある。そこで本年度は、ヒエツノアブラムシとタケツノアブラムシに着目し、その生態を確かめた。その結果、これらの種が安定して発生している調査地を発見した。さらに、タケツノアブラムシにおいて警報フェロモンを持っているかどうかを確かめるために野外操作実験を行なったところ、タケツノアブラムシがササコナフキツノアブラムシと同様に警報フェロモンを持っていることが示唆された。タケツノアブラムシはこれまでに警報フェロモンの存在が確認されているササコナフキツノアブラムシとは別属であるため、本年度の研究成果は社会性アブラムシで広く警報フェロモンが進化していることを示している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、台風などの気象条件によってアブラムシの発生地の消失が数多く見られたものの、ヒエツノアブラムシとタケツノアブラムシが安定して発生している箇所を発見した。また、タケツノアブラムシについては警報フェロモンの有無を確かめる実験をある程度まで進めた。タケツノアブラムシの成虫に物理的刺激を与えたところ、ササコナフキツノアブラムシなどのアブラムシと同様に角状管から液滴を放出する様子が観察された。また、液滴を放出した個体の周囲に存在した個体が、それまで行なっていた寄主植物からの吸汁を止め、歩き出す様子が観察された。タケツノアブラムシで観察された角状管から放出された液滴に対する行動は、他のアブラムシにおける警報フェロモンに対する行動と類似している。したがって、タケツノアブラムシもササコナフキツノアブラムシと同様に警報フェロモンによる社会コミュニケーションが存在することが示唆された。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究を進める上で、さらなる社会性アブラムシの生態の解明が欠かせない。そこで、今後も対象となる社会性アブラムシが警報フェロモンをもっているかどうかだけでなく、その生態の詳細を調べていく予定である。 また、特に注目しているササコナフキツノアブラムシ-捕食者系においてササコナフキツノアブラムシが警報フェロモンを用いてどのように捕食者を撃退しているのか、捕食者が警報フェロモンに対してどのように対抗しているのかについて明らかにしていく。これらにより社会性アブラムシにおける警報フェロモンの役割について理解を深めていく。
|
Research Products
(1 results)