2019 Fiscal Year Research-status Report
比較進化学的手法を用いた警報フェロモンの機能分化が社会性進化に与える影響の検証
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18K14765
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
服部 充 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 准教授 (80710095)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 食うー食われる相互作用 / 防衛戦略 / 真社会性アブラムシ / 進化生態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、室内での操作実験を行う準備および、アブラムシの社会性をつかさどる遺伝子の探索の準備を行った。 まず、これまで短期間での飼育は人工飼料で可能であったものの、継代飼育はできなかった社会性アブラムシの飼育方法の確立を行った。具体的には、真社会性アブラムシのヒエツノアブラムシの2次寄主植物であるチヂミザサを野外から採集し、鉢植えとした物の上で野外のヒエツノアブラムシを飼育した。この飼育方法により、すでに6か月以上の飼育に成功し、生態学的、発生学的、生理学的操作実験の基盤が整ったといえる。同様に、真社会性アブラムシのタケツノアブラムシについても飼育環境を整えた。これらにより、これまで飼育が困難であったため進まなかった社会性アブラムシの行動と生理、発生を結びつけるような研究が可能になった。 さらに、真社会性アブラムシのササコナフキツノアブラムシにおいてその社会性機能として最も重要な兵隊の捕食者に対する攻撃行動を決定していると思われる遺伝子に着目した。ササコナフキツノアブラムシの遺伝情報よりドーパミン合成に関する遺伝子を同定し、その発現量を調べるためのプライマーを作成することに成功した。これにより、兵隊の行動がどのようにして誘導されるのか確かめる基盤が整った。 また、本研究によりこれまでエンドウヒゲナガアブラムシにおけるドーパミン合成に関係する遺伝子(DDC)は2つしか見つかっていなかったが、ササコナフキツノアブラムシでは3つ見つけることに成功した。このことは、社会性の進化に、ドーパミン遺伝子を遺伝子重複により新規に獲得したことが重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
台風等の気候状況により、野外環境が大きく変化しアブラムシのコロニーが少なくなっており、実験に耐えられるサンプルサイズ、地点が確保できなかったため室内実験に切り替えざるを得ない状況になった。そのため、本年度は室内でも実験ができるよう基盤づくりを行った。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に行った室内実験を可能にする飼育環境は、これまで不可能であった人工的な環境変動に対する社会性アブラムシの反応の観察を可能にするだけでなく、生理学的、発生学的実験も可能にする。そこで、今後は、これまで予定していた行動実験だけでなく、幼若ホルモンや生体アミンにも注目し、社会性アブラムシの兵隊個体と通常個体の生理や発生がどのように異なることによって分業を行っているのか明らかにしていきたいと考えている。
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