2018 Fiscal Year Research-status Report
Host shift mechanisims of parasitoid fig wasps
Project/Area Number |
18K14773
|
Research Institution | JT Biohistory Research Hall |
Principal Investigator |
有本 晃一 株式会社生命誌研究館, その他部局等, 奨励研究員 (50814513)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 寄主転換 / 寄生蜂 / 絶対送粉共生系 / 種分化 / イチジク属植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)試料のサンプリング:奄美大島、沖縄島、慶良間諸島、久米島、宮古島、台湾において野外調査を行い、イヌビワとハマイヌビワから遺伝子解析や形態観察に用いるキバラコバチSycoscapteridea sp.試料を採取すると同時に、各植物種の植物体上でのキバラコバチの産卵行動を観察した。その成果と過去のデータより、イヌビワとハマイヌビワ、および共生関係にある送粉コバチの正確な分布域と、キバラコバチの各寄主を利用する地理的な範囲が判明した。また、分子系統解析に用いる外群として、同属の近縁種を採取した。 (2)分子系統解析:日本と台湾のイヌビワとハマイヌビワから得られたキバラコバチ73個体において、ミトコンドリアのCOI、COII、Cytbの部分配列を決定し、最尤法により系統解析を行った。これにより、日本と台湾の個体群間における系統関係や異なる植物種から得られた個体間の関係が判明した。 (3)外部形態の観察:日本と台湾のイヌビワとハマイヌビワから得られたキバラコバチ87個体において、頭部、胸部、腹部、産卵管の長さを計測し、体サイズに対する産卵管の長さを調べた。また、走査型電子顕微鏡を用いて、産卵管の先端構造や感覚器、触角の感覚子の形質状態を観察した。これにより、日本と台湾の個体群間における形態的な差や異なる植物種から得られた個体間での形態差を把握することができた。 以上により、寄主転換による種分化の初期段階における寄生蜂の遺伝的、形態的な変異・分化の程度をある程度把握することができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
遺伝子解析用の試料収集はほぼ完了しており、結果を示すのに十分な系統樹も得られている。形態観察用の試料は追加収集する必要があるが、おおむねの結果は現段階で得られており、試料を追加したとしても結果自体に大きな影響は与えず、データの精度や量の向上が今後の主な目的になると考えている。そのため、本研究課題は、順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、キバラコバチの形態観察用の試料を追加採取すると同時に、寄主植物認識に関する操作実験と解析を行う。寄主の探索には、植物が発する匂い物質を手がかりにしていると考えられるため、まずイチジク各種の花嚢の匂い成分分析を行う。また、Y字管を用いた植物の選択実験により、キバラコバチがどの植物種をどの程度選択するのか調べる。さらに、異なるイチジクから採取されたキバラコバチの寄主認識に関わる遺伝子発現の解析を行う予定である。
|
Causes of Carryover |
海外調査において台風など天候の影響により、予定より交通費の出費があった。そのため、物品費を減らして調整したが、わずかな差額が残ってしまった。非常に小額であるため、次年度の計画への影響はほぼ無いと思われるが、物品費に充てる予定である。
|