2020 Fiscal Year Annual Research Report
Host shift mechanisims of parasitoid fig wasps
Project/Area Number |
18K14773
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
有本 晃一 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(PD) (50814513)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 寄主転換 / 寄生蜂 / 絶対送粉共生系 / 種分化 / イチジク属植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)寄生蜂の分子系統解析:南西諸島から台湾、中国に分布するイチジク属植物各種から得られた寄生蜂において、昨年度よりも個体数を増やし系統解析を行った。核DNAの部分配列を用いた解析では、南西諸島から日本に分布するSycoscapteridea属の11種の寄生コバチがごく近縁なグループであることがわかった。また、ミトコンドリアDNAの部分配列を用いた解析では、11種のうち6種のイチジク種から得られた寄生蜂個体が単系統群を形成し、かつ遺伝的な分化も確認できなかった。対して、上記の単系統群を形成した個体以外のSycoscapteridea属の種やSycoscapter属の種、Philotrypesis属の種では、1種のイチジクから得られている場合がほとんどであった。短い部分配列を用いた解析ではあるが、結果は明瞭であり、扱う配列情報を増やしたとしても大きく結果は変わらないだろう。 (2)寄生蜂の形態観察:系統解析において単系統群を形成した6種のイチジク種から得られたSycoscapteridea属寄生蜂の触角を観察したところ、5節から11節の感覚子は3種で構成されており、合計本数は別種レベルの変異があることを再確認した。また、産卵管長は腹部長の2.3から3.7倍となっており、同様に別種レベルの広い変異幅があることを再確認した。2020年度は海外でサンプリングを行い、形態観察に用いる試料を追加する予定であったが、海外調査が行えず、既存サンプルの観察に終始した。 以上の結果から、基本的にイチジクコバチ類の寄生蜂は特定の1種を寄主としているが、多くの種を寄主として利用しているSycoscapteridea属の種が存在することが確実となり、その触覚や体サイズ、産卵管の形質には顕著な可塑性が見られる可能性が示唆された。
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