2020 Fiscal Year Research-status Report
カミキリムシ科における訪花性の進化およびそれに伴う多様化についての研究
Project/Area Number |
18K14776
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
山迫 淳介 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 研究員 (20748959)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 訪花性昆虫 / 甲虫目 / 共進化 / 系統分類 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度から継続して、訪花性カミキリムシの遺伝子解析用サンプル、または遺伝子情報の収集を行うとともに、より詳細な系統関係を明らかにするために、複数のミトコンドリアおよび核遺伝子領域を追加して分子系統解析を行った。また、文献記録、研究者の観察例、標本等の体表や消化管内の花粉の有無などの情報に基づいて、多くのカミキリムシについて訪花に関わる生態情報を収集した。 これらの分子系統解析で得られた系統樹と訪花に関する生態情報を組み合わせ、カミキリムシの訪花性に関わる祖先形質の推定を行った。その結果、カミキリムシ科の中で最も多くの訪花性種を含む広義ハナカミキリ亜科(ホソコバネカミキリ亜科を含む)は、亜科の基部ですでに訪花傾向を示すことが明らかとなり、亜科の進化や多様化と訪花性の関連が示唆された。本亜科については、代表的な属・種について解析できたものの、一部の亜科の基部に位置すると考えられる分類群のサンプルが未集積であるため、より詳細な議論のためには、これらの追加が必要であると考えられた。また、本研究により、本亜科の分類体系について大幅な見直しの必要性が示唆されたため、系統情報と各種分類情報を組み合わせ、国内外の分類学者とともに分類体系の見直しを開始した。 一方で、ハナカミキリ亜科に次いで多くの訪花性種を包含するカミキリ亜科では、一部の族や属などの分類群、またはそのまとまりごとに訪花傾向を示し、亜科内の各グループで独立に訪花性を獲得した可能性が示唆された。ただし、汎世界的に分布する本亜科については、解析に含められていない分類群も少なくないほか、解析に用いた分類群だけを見ても多くの分類学的な問題も示唆されたため、今後議論するためには、分類体系の見直しとともに広範な分類群の追加が必要となる可能性も示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
訪花性カミキリムシの内、ハナカミキリ亜科を中心に代表的な属・種の遺伝子解析用サンプルを集積することができたものの、本亜科の東南アジアおよび新大陸に分布する重要な分類群の一部が未集積であるほか、カミキリ亜科ではより広範な分類群の追加が必要であることも示唆された。本年度に国内外の研究者とともにこれらのサンプルを収集する計画を立てていたが、新型コロナウイルス感染症の影響によりサンプリングを実施できなかったため、予定していたサンプルを入手できず、進捗に遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
遺伝子解析用サンプルが未集積である分類群の内、特に重要なものを中心に、国内外の研究者と協力して引き続きサンプル収集を試みる。今夏に得られなかったサンプルについては、それらを除外した解析も検討しながら研究を進める。また、得られた結果をまとめ、学会発表や論文として公表する準備を進める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の影響により、収集を予定していた一部の重要なサンプルが未入手であるため、引き続きサンプル収集を試みるとともに、得られたサンプルの遺伝子解析を行う。
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Research Products
(1 results)