2019 Fiscal Year Research-status Report
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18K14779
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
榮村 奈緒子 鹿児島大学, 農水産獣医学域農学系, 助教 (10762114)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 鳥散布 / 海流散布 / 島 / 果実 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、種子散布に関わる果実二型の遺伝子基盤とその進化プロセスの解明を目的としている。研究対象種として、種子散布に関わる果実二型をもつ海岸性低木のクサトベラScaevola taccada(クサトベラ科)を用いている。本種には、中果皮がコルク質で水に浮く果実をもつ個体(コルク型)と中果皮が果肉質で水に浮かない果実をもつ個体(果肉型)が集団内に存在する。 これまでの研究より、光学顕微鏡等を用いた二型果実の成熟段階ごとの形態観察から、開花20日前後にコルク型の中果皮の細胞が木化することで、二型の形態分化が生じることが示唆された。また、同様に二型果実の成熟段階ごとにRNA-seqによるde novoトランスクリプトーム解析を行った結果、開花20日から30日後に木化形成に関与する酵素や転写因子の多くの遺伝子群で発現量に二型間で異なることが明らかになった。このことは、コルク型中果皮のコルク質の主成分が二次細胞壁であることと整合性がみられた。 昨年度より、コルク型と果肉型の原因遺伝子のスクリーニングを行うために、全ゲノム連関解析法の一つであるQTL-seq法を行う準備を進めている。QTL-seqで用いる基準となる本種1個体の全ゲノム配列は、「2019年度先進ゲノム支援」の新規ゲノム配列決定の支援より、PacBio SequelⅡによるシーケンスから取得した。この個体は、西表島産の自殖第一世代のコルク型である。コルク型を基準配列に選んだ理由は、人工交配実験による二型間の遺伝様式の推定から、コルク型が果肉型に対して劣勢ホモの可能性が高いと考えられたためである。QTL-seqで使用する個体の葉のサンプリングは、八重山諸島の石垣島1集団と西表島2集団で、コルク型と果肉型のそれぞれについて約25個体を対象に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
クサトベラのゲノムDNAは、高濃度で高分子のものを抽出するのがなかなか難しく、実験に時間がかかってしまった。結局、共同研究者に手伝っていただいて、無事に抽出できた。論文作成も遅れているが、現在投稿中である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、QTL-seqからコルク型と果肉型の違いをもたらす遺伝子のスクリーニングを行う。現在、QTL-seqで使用する個体の葉からゲノムDNAの抽出を行っているところである。果実型ごとにすべての個体のゲノムDNAを均等に混合して、次世代シーケンサーでシーケンスを行う。 二型の遺伝様式を明らかにする目的で、約6年前より人工交配実験で作成したF1個体を栽培している。しかし、これらのF1個体の多くはまだ結実していない。そのため、QTL-seqの解析結果を用いて二型を判別できる分子マーカーを作成し、これらのF1個体の果実型を同定したい。 また、クサトベラ以外の植物で、種子散布に関わる果実多型の存在を見つけるためにフィールド調査を行う予定である。様々な植物種の液果や核果などの動物被食散布型の果実について、水散布能力の有無を調べたい。
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Causes of Carryover |
昨年度に予算が余った理由は、先進ゲノム支援に採択されたことから、シーケンス代がかからなかったためである。この未使用分のお金は、本年度に実験機器や試薬などの購入費として使用する予定である。昨年度までは分子実験を前に所属していた大学の研究室で行っていたが、本年度から現在所属しているところで行うため、多くの費用が必要である。
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