2019 Fiscal Year Research-status Report
マメ科植物の地域適応に関与する根粒菌のゲノム進化-共生関係の創出維持機構の解明-
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18K14784
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
大槻 達郎 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 主任学芸員 (60760189)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ゲノム進化 / 地域適応 / 共生 / 根粒菌 / マメ科植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
マメ科植物-根粒菌共生系において、宿主特異性に関与する共生遺伝子群の進化を理解することは、共生関係の創出・維持機構の解明に不可欠である。材料のハマエンドウ(海浜性)は、一部が淡水の水辺に進出している種である。これまでの研究では、水辺に進出した本種のエコタイプ(湖岸タイプ)は、淡水の湖岸において海浜タイプのものよりも初期成長量が多いことが示されている。また、湖岸・海浜エコタイプに付着した根粒菌に着目すると、根粒形成に関与するnod遺伝子の配列が異なることが明らかとなっている。しかし、根粒菌の宿主特異性および地域特異的なゲノム進化については未解明である。 本研究では根粒菌の接種実験を行い、宿主特異性の程度を明示する。また次世代シーケンサーを用いた解析により、水辺・海浜における根粒菌のゲノム進化を明らかにする。それらを総合して、水辺・海浜における植物-根粒菌共生系の創出・維持機構を解明することを目的とする。 通常海浜に生育するハマエンドウの根粒は竿状だが、湖岸の植物体に付着する根粒の中には丸形のものが見られた。また、湖岸と海浜の植物体の根茎を採取し、各々の土壌(砂)で栽培すると、海浜由来の根茎では湖岸・海浜土壌ともに根粒を着けるが、湖岸のものは海浜のものと比べると、海浜土壌において根粒の付着が遅かった。このことから、ハマエンドウにおいて根粒共生の宿主特異性があるとすれば、発芽初期に重要な役割を果たす可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は根粒菌の単離培養系の確立と系統解析を主として研究計画を進めた。しかし、単離培養系の確立に関しては予定通りに進んでいない。所属機関で使用できる設備が限られており、現在単離培養の諸条件の検討している段階である。そのため、地域株の系統解析まで研究を進めることはできなかった。これから単離培養を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は解析機材のトラブルがあり、本来すべきnodBC配列と16SrRNA遺伝子の配列に基づく系統解析ができなかった。その一方で、培養に必要な機材を購入したので、今後単利培養に重点を置く。年度末から解析機材が使用できるようになったため、塩基配列の解析も進めていけるようになった。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で2つの学会がキャンセルとなった。その分の旅費分を次年度の旅費に充てる。また、根粒菌の単離培養が確立されず、実験が進まなかったことから、人件費と試薬を買うに至らなかった。
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Research Products
(5 results)