2018 Fiscal Year Research-status Report
Ecological and physiological factors driving the evolution of longevity in social aphids
Project/Area Number |
18K14786
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
植松 圭吾 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (00793861)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 社会性昆虫 / アブラムシ / 進化 / ゴール / おばあさん効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、社会性アブラムシにおける長寿の進化、および繁殖終了後も生存し、防衛などの自己犠牲的な利他行動を行う”おばあさん効果“の進化の解明を目的とする。具体的には、宿主植物に形成した完全閉鎖ゴール内で長期間生活するという社会性アブラムシの生態に着目し、生活史におけるゴール内部の環境変化を計測する。また、内部のアブラムシの代謝に関わる生理的変化・遺伝子発現の変化を解析する。それらの結果を種間・種内の表現型間で比較する事によって、長寿の進化をもたらした生態学的・生理学的要因について検証する。 本年度は、イスノキにゴールを作る社会性アブラムシ3種を対象とし、ゴール及び内部のコロニーについて調査を行った。完全閉鎖ゴール内の酸素濃度を計測した結果、大気中と比較して約5-8割程度の酸素濃度であることが判明した。この酸素濃度の変化に関連して、もっとも濃度の低かったモンゼンイスアブラムシにおいては、繁殖終了後の寿命が数ヶ月にわたることが判明しており、長寿と酸素濃度の変化との関連が示唆された。加えて、内部のアブラムシの齢構成および、生理状態の指標として体重を測定した。また、ゴール内の個体についてサンプリングを行った。特に、繁殖終了後も生き残る無翅成虫については、季節の変化に応じて繁殖中の成虫と繁殖を終えた成虫それぞれをサンプリングし、RNA抽出を行った。今後RNAseq解析により、無翅成虫の繁殖終了に伴い発現が大きく変動する遺伝子、特に発現が増加する遺伝子に着目し、その機能を探る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
完全閉鎖ゴール内部が低酸素濃度であることが判明しているなど、これまでにない知見が得られている。また、サンプリングが円滑に行われ、遺伝子発現解析に必要なサンプルがほぼ揃ってきているため。
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Strategy for Future Research Activity |
無翅成虫のなかでも繁殖を終了する前の個体と繁殖終了後の老齢個体間で、代謝経路関連の遺伝子群に有意な差が生じるかを調べる。また、低酸素濃度への適応の有無を明らかにするため、異なる酸素濃度中で昆虫を飼育し、その生存曲線について、種間・表現型間で有意な差が生じるかどうか、検証を行う。
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Causes of Carryover |
国内・国際学会への出張費用については、別の費用から計上することが可能となった。また、いくつかの試薬については、前年度に研究室に存在した余剰分を使用することが可能であり、機器についても代替機が使用できた。これらの物品は次年度に購入することを予定している。
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