2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K14793
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
山口 諒 首都大学東京, 理学研究科, 日本学術振興会特別研究員(PD) (80812982)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 種分化 / 生物系統地理 / 数理モデル |
Outline of Annual Research Achievements |
非適応的放散は、複雑な近縁種構成とニッチ利用の間に明確な関係が見出せず、放散のプロセスにおいて適応の貢献してきた割合が比較的少ない場合を指す。非適応的放散の主要因である集団の地理的隔離は、地殻変動による島嶼化などの非生物学的(Abiotic)な現象によってもたらされることが多い。本研究課題では、地理的分断に代表される非生物学的なプロセスではなく、生物学的相互作用によって近縁種が互いに地理的に分断し合う“Biotic Population Subdivision (BPS)”という新規プロセスの提唱を行う。本仮説検証には、飛翔能力が欠如しているオオヨモギハムシの野外集団を用いる。本種を実例として、数理モデル、分子系統解析および実験室交配実験により、連続的な地形空間で隔離集団の創出と種分化の反復を再現・解析し、BPSが野外で非適応的放散の駆動要因の一つとなっていることを検証する。本年度は、分子・交配実験に用いるオオヨモギハムシの北海道集団のサンプリングに注力し、予定よりも広範囲のサンプルを集めることができた。現在、分子系統解析と形態解析を行っており、次年度のBPSシナリオの推定に向けて課題は順調に進行している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
オオヨモギハムシの北海道集団は約10の形態タイプに大別でき、未記載の複数種を含む“species complex”であるとされる。各形態ユニット間に食性の分化はなく、それぞれのタイプが生態環境との相関を持たずにパッチ状の分布を示している。各集団の系統地理関係を調べるため、成虫を中心としたサンプリングを行い、高標高および離島の産地を除くすべての形態ユニットについてサンプルを収集した。サンプル個体については分子系統解析に向けたDNA抽出および形態測定に向けた解剖が完了している。また、ユニット間の生殖隔離検証に向けた交配実験に備え、累代飼育も問題なく進行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に採集が完了できなかった集団のサンプリングを行い、分子系統および形態解析に追加するほか、累代の申請中を用いて交配前隔離の検出実験を行う。また、予備的解析の完了している数理モデルの精緻化に取り組み、BPSシナリオの検証を多方面から開始する。
|
Causes of Carryover |
前年度のサンプリング個体をまとめて、次世代シーケンシングサービスを行う業者に委託を予定しており、次年度の交付額と合わせて支出をする必要がある。
|