2018 Fiscal Year Research-status Report
変動する自然生態系の多様性維持メカニズム:非線形時系列解析を用いた新たな展開
Project/Area Number |
18K14797
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川津 一隆 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20747547)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 複雑性-安定性関係 / 非線形時系列解析 / 力学系理論 / 長期時系列データ / マメゾウムシ実験系 |
Outline of Annual Research Achievements |
生態系の複雑性-安定性関係の形成メカニズムを解明することは生態学だけでなく生物多様性維持の観点からも重要な課題である.しかしながら非線形な変動を示す野外群集から複雑性と安定性を定量化することは従来の平衡群集観に基づく理論体系では困難であった.当該年度は,この課題を解決するために,1)非平衡系の複雑性と安定性を同時に解析できる理論を開発し,2)その理論を時系列データに応用するための時系列解析法として実装した.また,確立した解析法を野外群集時系列に応用し,自然界における複雑性-安定性関係とその形成機構の検証を行った.以上の成果の一部は東京大学弥生キャンパスで開催された第34回個体群生態学会および神戸国際会議場で開催された第66回日本生態学会大会で発表された.また,科学論文として国際学術誌Oikos, Proceedings of the Royal Society B, Population EcologyおよびScientific Reportsにおいて発表された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本課題は,1)力学系理論の発展,2)時系列解析法への実装,3)室内操作実験,4)野外群集時系列の解析の4つのサブ課題からなる.当初計画では研究1,2を初年度に行う予定であったが,研究1については前年度までの予備研究から,限られた時系列データから類推した安定性の指標が真の力学系と一致することが証明済みであった.そこで,当該年度は研究2の簡便な時系列解析プログラムへの実装と人工時系列を用いた理論の検証に注力できた.また,これらの研究を予定よりも早く進めることができたため,研究4についても実施することが可能となった.加えて,研究1の副産物として,生態系の状態変化を限られたデータから類推することを可能にする手法について新たに知見が得られたため,今後の発展・応用が期待される.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上述のサブ研究で残されている室内実験系を用いた理論の検証を行う予定である.加えて,限られた時系列データから生態系の状態変化・異常検知を可能にする理論を実装し,室内実験系で得られたデータに適用することで,実用の可能性を探る研究も並行して行う予定である.これらの結果は,前年度までに得られた成果と合わせて複数本の論文にまとめ国際学術誌に投稿する.
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Causes of Carryover |
当初予定していた室内実験を実施しなかったため.実験は次年度に実施する予定となっている.
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