2021 Fiscal Year Research-status Report
変動する自然生態系の多様性維持メカニズム:非線形時系列解析を用いた新たな展開
Project/Area Number |
18K14797
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
川津 一隆 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (20747547)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 複雑性-安定性関係 / 非線形時系列解析 / 力学系理論 / 長期時系列データ / マメゾウムシ実験系 / 魚類群集潜水観察 |
Outline of Annual Research Achievements |
生態系の複雑性ー安定性関係の形成メカニズムを解明することは生態学だけでなく生物多様性維持の観点からも重要な課題である.しかしながら,非線形な変動を示す野外群集から複雑性と安定性を定量化することは従来の平衡群集観に基づく理論体系では困難であった.この課題を解決するために,本研究計画ではまず,1)系の安定性に大きく影響する種間相互作用の密度依存性を観測時系列データから推定する手法と,2)推定したい密度依存性を仮想的に改変することで動態の安定性*1に与える影響を調べる手法を開発した.これらの手法を用いて,寄生蜂ーマメゾウムシ実験個体群*2のデータと潜水観察による魚類群集データ*3の解析を行ったところ,1)実験個体群では,系の安定性を高めるスイッチング寄生様の相互作用が検出され,またその効果は不安定化に働く宿主感の競争よりも強い,2)魚類群集では,系の安定会に働く密度依存性を持つ相互作用が卓越すること,またそれらの相互作用により魚類群集の長期存続が達成されていることを明らかにした.本年度は,これらの結果を一本の論文にまとめ,国際学術誌Nature Communicationsに投稿し査読プロセスまで進んだ.しかしながら,研究の重要性は認められたものの不受理となり現在次の投稿先に向けて修正している段階である.
*1:時系列データの変動係数CVから計算される. *2:近縁なヨツモンマメゾウムシ・アズキゾウムシと寄生蜂ゾウムシコマユコバチからなる(マメゾウムシには資源競争・繁殖干渉が働くため2種だけで飼育すると必ず競争排除が起こる). *3:舞鶴湾で行われている月2回のトランセクト潜水観察 *4:個体数の多い宿主をより好んで寄生する行動
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度までに本研究計画の一部を国際学術誌Ecology Letters, Population Ecology誌および3本の総説をBook Chapterにて出版した.また,研究の取りまとめに当たる論文を本年度取りまとめ,国際学術誌Nature Communicationsに投稿し査読プロセスまで進んだものの不受理となり,データの再解析も含めて新たな投稿先に向けて論文修正の段階にあるため.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はデータの再解析により,より信頼性のある結果を追加し,生物学・生態学分野にフォーカスしたインパクトの高い学術誌(Ecology Letters誌またはProceedings of Royal Society B誌)への投稿・出版を目指す.
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Causes of Carryover |
前年度までに購入予定だったワークステーションの開発が遅れたことに加え,オープンアクセス費用として予定していた論文出版の予定が遅れたため.次年度にこれらの使用を計画している.
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Research Products
(4 results)