2020 Fiscal Year Research-status Report
脊椎動物における成体脳の再生能力を制御する分子機構の解明
Project/Area Number |
18K14824
|
Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
清水 勇気 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 研究員 (30778064)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ラジアルグリア / 神経再生 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュは高い再生能力を持つことが報告されてきたが、これまでに作製したゼブラフィッシュ中脳損傷モデルではラジアルグリアが神経幹細胞として組織再生に寄与し、Wntシグナルの活性化が必要であることを明らかにした。本研究課題ではさらに中脳損傷モデルを用いた網羅的な遺伝子発現解析および機能解析を行い脊椎動物の神経再生を制御する分子基盤の解明を目指すものである。下記に研究実績の概要を記す。 1)中脳損傷モデルを用いた網羅的な遺伝子発現解析:ゼブラフィッシュおよびマウス脳損傷モデルにおける遺伝子の発現変化を比較し、ゼブラフィッシュでのみ発現が上昇する12個の分泌タンパク質などを抽出した。本年度は、ゼブラフィッシュ脳損傷モデルでの遺伝子発現変化の詳細を解析し、IL6-Stat3経路の活性化や細胞増殖、自然免疫に関連する遺伝子の発現上昇を明らかにした。 2)ゼブラフィッシュを用いた候補遺伝子の機能解析:生物種間での遺伝子発現変比較により抽出された分泌因子のうち、神経幹細胞の増殖・分化における機能が未知な因子について、阻害剤や組換えタンパク質の投与による機能解析を進めている。 3)マウスなど哺乳類における遺伝子の機能解析:生物種間での遺伝子発現比較により抽出された分泌因子について、ヒト神経幹細胞の培養系を用いた増殖・分化における機能を進めている。解析対象の分泌因子がヒト神経幹細胞の増殖を誘導することを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、比較解析により抽出された分泌因子について、ゼブラフィッシュ脳損傷モデルおよびヒト神経幹細胞を用いて、神経幹細胞の増殖・分化における機能を解析を行う予定であったが、緊急事態宣言等への対応(在宅勤務など)により、増殖に対する作用の解析に留まっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
脳損傷モデルでの発現変動遺伝子解析および生物種間の比較により絞り込んだ候補遺伝子について、以下の2つの研究を通じてゼブラフィッシュおよびヒト神経幹細胞を用いた解析を行うことで、生物種間の共通点・相違点を明らかにし、脊椎動物の成体脳の再生を制御する分子基盤の解明を目指す。 1)ゼブラフィッシュを用いた候補遺伝子の機能解析: 生物種間での遺伝子発現変比較により抽出された分泌因子について、阻害剤や組換えタンパクの投与により脳損傷モデルにおける神経幹細胞の増殖・分化について与える作用の解析を進める。 2)ヒト神経幹細胞における遺伝子の機能解析: 生物種間比較で抽出された分泌因子について、ヒト神経幹細胞を用いた培養系により、神経幹細胞の増殖・分化に与える作用の解析を行う。
|
Causes of Carryover |
緊急事態宣言等への対応により研究計画を修正し、延長申請を行ったため次年度使用額が生じた。神経幹細胞の分化における機能解析にかかる試薬の購入などに使用する計画である。
|
Research Products
(3 results)