2018 Fiscal Year Research-status Report
脳内免疫細胞の力学知覚による神経回路制御機構の探索
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18K14825
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
堀内 浩 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 特任助教 (60760733)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | ミクログリア / 力学知覚 / 神経回路 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、①ミクログリアが力学知覚によってシナプスとの接触を認識すること、②シナプスの硬度に依存したメカノトランスダクションによる神経回路修飾基盤を生体2光子イメージングによって明らかにする。すなわち、ミクログリアは、その動的な性質から脳内の様々な細胞との接触を繰り返しており、化学的シグナルのみならず、機械的シグナルを受け取っていることが予想されるが、どのような分子メカニズムを介しているのかあるいは神経回路の可塑的な性質においてどのような役割をもっているのか明らかでない。 今年度は、Cre-loxPシステムを用いて、ミクログリア特異的piezo1欠損マウスを作成した。2光子顕微鏡を用いて生体におけるPiezo1欠損による形態および動態変化を観察を行った。また、ミクログリア特異的にカルシウム感受性蛍光タンパク質を発現させたマウスからスライス培養標本を作成し、piezo1特異的活性化薬Yoda1を投与したところ、著名なカルシウム応答を明らかにした。さらに、脳内の硬度を模したハイドロゲルの作成を行い、ゲル上へのミクログリア単離培養を行うことにより、硬さの変化に伴う形態変化を観察した。これまでに、どのような分子メカニズムを介してミクログリアが脳内の機械的な刺激に対して応答しているかはわかっていない。本研究成果によって得られたミクログリア特異的な機械受容チャネル欠損マウスは、今後ミクログリアの力学知覚を調べるための優良なツールとなり得る。また、ミクログリアの活動パターンはこれまでに優れたカルシウム感受性蛍光タンパク質を発現させることが難しいために、あまりよくわかっていない。本課題で作成したマウスを用いることによってミクログリアのカルシウム応答を明らかにできると期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、Cre-loxPシステムを用いて、ミクログリア特異的piezo1欠損マウスを作成し、2光子顕微鏡を用いて生体におけるPiezo1欠損による形態および動態変化を観察することに成功した。当初、同マウスのミクログリアに遺伝子導入法によって、カルシウム感受性蛍光タンパク質を発現させ、力学知覚時のカルシウム応答を調べる予定であった。しかしながら、十分なタンパク発現が認められなかった。そこで、tet-offシステムを用いた遺伝子改変マウスの作成により、ミクログリア特異的にカルシウム蛍光タンパク質を発現させることに成功した。生体2光子イメージングによって、カルシウム活動パターンを明らかにすることに成功した。今後、神経活動を薬理的あるいは光遺伝学的手法によって制御し、ミクログリアの活動パターンに対する影響を明らかにする予定である。また、同マウスからスライス培養標本を作成し、piezo1特異的活性化薬Yoda1を投与したところ、著名なカルシウム応答を示すことが明らかとなった。さらに、脳内の硬度を模したハイドロゲルの作成を行い、ゲル上へのミクログリア単離培養を行った。ハイドロゲルの作成方法については確立できたものの、ミクログリアの接着は認められなかった。今後、ゲル表面のコーティング方法を模索し、硬さの違いに伴ったミクログリアの形態変化について調べる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、遺伝子導入法によるミクログリアへのカルシウム感受性蛍光タンパク質の発現が難しかったため、当初の予定にはなかったものの、tet-offシステムを用いた遺伝子改変マウスの作成により、ミクログリア特異的にカルシウム蛍光タンパク質を発現させることに成功した。今後、薬理学的手法を中心に、機械受容チャネルの機能を制御することにより、ミクログリアの機能応答に対する影響を調べることで、ミクログリアの機械的シグナルに対する応答性を明らかにする。硬さの異なるハイドロゲルの作成に成功し、単離したミクログリアを播種が接着が認められなかった。今後、適切な培養条件を見いだし、外部環境の硬さ変化に対するミクログリアの形態的な変化について検証する。
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