2018 Fiscal Year Research-status Report
光活性化型CaMKIIを用いた、シナプス長期増強の誘起による記憶・学習の直接操作
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18K14826
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
柴田 明裕 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 特任研究員 (10707409)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光活性化型CaMKII / FRET |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、シナプス長期増強を誘起する光活性化型CaMKIIの開発を行った。それには、植物の遺伝子であるPhototoropin1が持つLOV2遺伝子に着目した。このLOV2は、青色光照射により閉状態から開状態になる。そのため、LOV2をCaMKIIの制御ドメインとキナーゼドメインの間に遺伝子挿入し、光活性化型CaMKIIのcDNAを作製した。 次に、作成した光活性化型CaMKIIが、青色光により開閉するかを検証した。実際に、光活性化型CaMKIIの両末端に緑色蛍光タンパク質と、赤色蛍光タンパク質をつけた光活性化型CaMKIIのFRETセンサーを作製し、HeLa細胞に発現させ、開閉によるFRETの変化を蛍光寿命イメージング顕微鏡により検出したところ、青色光照射後にFRETが変化することが分かった。つまり、青色照射により光活性化型CaMKIIの開閉を制御することに成功した。 次に、光活性化型CaMKIIが、内在性のCaMKIIに比べて、どれくらいの自己リン酸化能を保持しているのかを検証した。それには、GFP-CaMKIIとGFP-光活性化型CaMKIIをそれぞれ別のHeLa細胞に発現させ、イオノフォア刺激と青色光により自己リン酸化される286番目のスレオニンを検出する抗体を用いて、免疫沈降法とwestern blottingにより検出した。その結果、光活性化型CaMKIIは、内在性のCaMKIIとほぼ同じ自己リン酸化能を有していることが分かった。 さらに、光活性化型CaMKIIをラットの海馬スライス切片の神経細胞に発現させて、二光子顕微鏡下で単一スパイン内の光活性化型CaMKIIを活性化させたところ、CaMKIIのキナーゼ活性依存的にスパインの体積変化が30分以上維持されることが分かった。つまり、スパインの体積変化には、CaMKIIのリン酸化が重要であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1年目に計画していた光活性化型CaMKIIの開発がうまくいったため、二年目を待たずして二年目に予定していた計画(光活性化型CaMKIIは、シナプス長期増強を誘起することが出来るか?)に移ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、光活性化型CaMKIIによりシナプス長期増強が誘起されるかを多方面から検証していく。シナプス長期増強は、誘起過程の前期と維持過程の後期から構成されている。そこで、まずは、前期課程の誘起から検証する。それには、一般的に前期のシナプス長期増強に必要とされている以下の3つを検証する。 1、スパイン体積増加 2、AMPA受容体の集積 3、興奮性シナプス後電流の増加
次に後期のシナプス長期増強を誘起出来るかを調べる。一般的に後期のシナプス長期増強を維持するには新たなタンパク質の合成することで長期間(4時間以上)の体積変化を維持しているとされている。そこで以下の2つの検証を行う。 1、4時間以上のスパイン体積増加 2、タンパク質合成阻害剤により体積変化の阻害
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Research Products
(3 results)