2019 Fiscal Year Research-status Report
光活性化型CaMKIIを用いた、シナプス長期増強の誘起による記憶・学習の直接操作
Project/Area Number |
18K14826
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
柴田 明裕 生理学研究所, 脳機能計測・支援センター, 特任研究員 (10707409)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 光活性化型CaMKII / LTP |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、開発した光活性化型CaMKII(photo activatable CaMKII: paCaMKII)の活性化による特定のシナプスへの長期増強(LTP)の誘起を検証した。 LTPは、誘起過程の前期と維持過程の後期から構成されている。先ず、一般的に前期のLTPに必要な(1)スパイン体積増加、(2)AMPA受容体の集積、(3)興奮性シナプス後電流(EPSC)の増加を検証した。 ラットの神経細胞にtdTomato-P2A-paCaMKIIと、細胞膜上のpHで発光する緑色蛍光タンパク質SEPを繋げたAMPA受容体のサブユニットSEP-GluR1を遺伝子導入した。スパインの形態変化の観察とpaCaMKIIの光刺激は、2光子顕微鏡を用いた。その結果、スパインの体積増加に伴い、スパインの膜上のGluR1の密度が増加した。そして、EPSCの変化を調べるために、Whole-cell patch-clamp法を用いたところ、スパインの体積増加に伴い、EPSCが増加した。これらから、paCaMKIIを活性化させるだけで、前期のLTPを誘起することが明らかになった。 次に後期のLTPの誘起を調べた。一般的に後期のLTPは新たなタンパク質を合成することで長期間(4時間以上)の体積変化を維持しているとされているため、タンパク質合成阻害剤の存在下で体積変化の観察を行った。 上記の実験と同様に、ラットの神経細胞に、tdTomato-P2A-paCaMKIIを遺伝子導入し、2光子顕微鏡を用いて、刺激と4時間以上の観察を行った。その結果、シナプスの体積増加が、4時間以上維持されることを分かった。さらに、タンパク質合成阻害剤を加えたところ、シナプスの体積増加が、4時間以上維持されないことが分かった。つまり、特定のシナプス内のpaCaMKIIを活性化させることにより、タンパク質合成依存的な体積増加、つまり、後期のLTPを誘起していることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目に計画していた光活性化型CaMKIIは、シナプス長期増強を誘起することが出来るか?という検証が予定通り終わることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、光活性化型CaMKIIによりシナプス長期増強がどのような分子メカニズムによって誘起されるか、検証していく。光活性化型CaMKIIにより、CaMKIIのシグナル伝達経路だけで誘起されるシナプス長期増強が、どの様なシグナル伝達経路を用いているのかは、はっきりしていない。
そこで、先ずスパインの体積増加に必要なアクチン制御分から検証する。それには、分子間相互作用を可視化することが可能な2光子蛍光寿命イメージング法を用いる。
次にシナプス長期増強と記憶学習の直接関係を調べる。それには、光活性化型CaMKIIをアデノ随伴ウイルスベクター(AAVベクター)を用いてマウスの海馬の神経細胞に特異的に発現させる。そして、青色LEDをラットの海馬に挿入することで、任意のタイミングでシナプス長期増強を誘起できるようにする。
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