2020 Fiscal Year Research-status Report
マウス脳内におけるコンドロイチン硫酸含有グリア構造の時空間的分布解析
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18K14834
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Research Institution | Obihiro University of Agriculture and Veterinary Medicine |
Principal Investigator |
近藤 大輔 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (90708364)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コンドロイチン硫酸 / グリア構造 / バスケット細胞 / 大脳皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神経細胞の可塑性に影響を与えるコンドロイチン硫酸を糖鎖に含む酸性グリア構造について、その脳内分布パターンに着目している。このグリアは抑制性介在細胞であるバスケット細胞の周囲に限局することが知られており、前年度に続き、令和2年度はマウスの大脳皮質4領域におけるバスケット細胞の分布の多様性の詳細を明らかにした。 大脳皮質は新皮質・中間皮質・原皮質・古皮質に分けられ、それぞれにおける全細胞数におけるバスケット細胞の比率を、レクチンVVAを用いた組織化学的手法によって解析した。原皮質や古皮質領域ではバスケット細胞の比率は新皮質よりも低い一方で、中間皮質領域では新皮質よりも顕著に高かった。また全ての領域において、神経回路の出力側の層に多くのバスケット細胞が分布した。以上の結果より、バスケット細胞による投射神経細胞の発火制御の依存程度は中間皮質領域によって大きく異なっている可能性が示唆された。 加えて令和2年度は、近年病態モデル動物として認識されているコットンラットにおける、水頭症の発症率および組織病態を追究した。水頭症の病態における非細胞性グリアの知見はほとんどなく、特にほぼ無症状の正常圧水頭症における知見はない。本研究ではコットンラットの正常圧水頭症の有症率は30%を超え、さらにその組織病理学的特徴を明らかにした。特に正常圧水頭症の動物において、大脳新皮質の第V層において、非細胞性グリア構造の顕著な減少を発見した。これらの知見は、現在国際誌へ投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は、前年度までに得られていた大脳皮質内における領域ごとのバスケット細胞の空間的分布パターンを、より正確に明らかにした。その一方で、申請時において今年度の内容として計画してた個体発生における変化(時間的分布パターン)については、現段階で検証できていないことから、本研究の本筋に関してやや遅れていると考えられる。 その代替として今年度は、生理条件下でも多くの全身性疾病を有していることが報告されているコットンラットについて、病態と非細胞性グリアの関連を精査する目的で、脳組織に関する知見を集積した。その結果、コットンラットでは生理条件下において正常圧水頭症の有症率が非常に高いことを発見し、その組織病態の詳細が明らかとなった。この知見は水頭症研究にコットンラットがモデル動物として適している可能性を示している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、これまでに得られた大脳皮質内におけるコンドロイチン硫酸含有グリア構造およびバスケット細胞およびの空間的分布パターンについて、学術誌への投稿発表を行う。 加えて、個体発生レベルでの分布パターンの変化を検証し、マウスにおけるそれらの時空間的分布パターンを明らかにする。
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Causes of Carryover |
当該研究において、論文発表のためには現在得られている知見の追試が必要であり、2021年度分の助成金はその物品費・論文投稿料として使用する。
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Research Products
(1 results)