2018 Fiscal Year Research-status Report
神経上皮の新規運命選択機構:細胞突起の遠隔的接触によるDelta-Notch制御
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18K14837
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
川上 巧 名古屋大学, 医学系研究科, 特任助教 (50793858)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 発生・分化 / 細胞間相互作用 / 神経前駆細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
胎生期の哺乳類大脳において、神経前駆細胞から生産された娘細胞は周囲の分化細胞との接触を介したDelta-Notchシグナル伝達を利用して、「分化」か「未分化」の運命選択を行う。従来、そのシグナル伝達は直近の隣接細胞間のみで行われる狭い範囲のものが想定されてきたが、最近、遠方の細胞にまで到達する葉状仮足を新規に発見したことで、そのやり取りはより広範囲に渡る可能性を見出した。 本研究の免疫電顕による三次元超微構造解析で、Deltaの膜局在領域は分化細胞の葉状仮足が存在する脳室面付近に限局していることが明らかとなった。もし葉状仮足を介した細胞間の接触がシグナル伝達に寄与するのであれば、分化細胞の葉状仮足を人為的に失わせた時に、周囲の娘細胞はDeltaシグナルを受け取れず、その多くが「分化」を選択するはずである。葉状仮足を消失させるために、その形成に関与するあるタンパク質の薬剤阻害実験を行った。組織内での仮足の形態・動態をタイムラプス観察したところ、通常では仮足の伸長・退縮やその突出位置が時々刻々と変化する様子が観察されるが、薬剤により、仮足の消失あるいはその退縮が観られた。また、仮足形成に関与する他の遺伝子の発現を抑制するため、in uteroエレクトロポレーションを用いたshRNA導入によるノックダウン実験を行った場合でも、同様に仮足の消失が観察された。両実験系において、娘細胞がTbr2陽性(分化細胞に発現する転写因子)を呈する割合が増加する結果が得られた。これらの結果から、葉状仮足を介した遠隔的な細胞間接触が娘細胞の運命選択に影響を及ぼすひとつの要因であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
葉状仮足を消失させる実験系について、条件検討を重ねた結果、薬剤実験と機能抑制実験の双方からのアプローチを確立できた。得られた成果は国際学会にて報告した。また、葉状仮足の消失を長期間に渡って実現するために、機能抑制実験で対象にした遺伝子のノックアウトをCRISPR-Cas9にて検討中であり、shRNA使用時と同様の表現型と解析結果が得られつつある。 さらに、葉状仮足を介した細胞間接触と娘細胞の運命選択の関係性を数理モデルにて検証するために、そのパラメータとなる「仮足の到達範囲」、「接触細胞数」、「接触面積」をFIB/SEMによる三次元超微構造解析から算出中である(画像取得済み)。また、同数理モデルに用いる「分化・未分化細胞の組織内分布」をGadd45g-d4Venusトランスジェニックマウスを用いて、いくつかの発生ステージで解析中である(画像取得済み)。
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Strategy for Future Research Activity |
葉状仮足を介した遠隔的な細胞間接触と娘細胞の運命選択の関係性を調べるために、既存の側方抑制モデルを基礎とした数理モデルを作製する。このモデルで運命選択が再現できれば、Delta-Notchシグナル伝達がいかにして分化細胞(あるいは未分化細胞)の生産数を調整しているのかといった、組織全体の細胞生産様式の理解に繋がる。得られた成果を論文にまとめる。
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Research Products
(4 results)