2018 Fiscal Year Research-status Report
Functional mapping of primate insular cortical areas based on their neural networks
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18K14838
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Research Institution | University of Tokyo Health Sciences |
Principal Investigator |
上園 志織 東京医療学院大学, 保健医療学部, 助教 (30755666)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 霊長類 / 大脳皮質 / 島皮質 / 神経路 / ウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は小型霊長類であるマーモセットを実験動物とし、霊長類の島皮質の入力および出力系の連絡、すなわち島皮質のある特定の領域はどの大脳皮質領野と連絡しているかを、神経トレーサー物質の注入実験により解析し、島皮質の機能の細分化を神経解剖学的に明らかにすることを目的としている。 2018年度は、島皮質の多シナプス的連絡を明らかにするため、マーモセットの島皮質に逆行性越シナプス的神経トレーサーである狂犬病ウイルスベクターを注入した。具体的にはマーモセット脳のMRI画像を取得し、島皮質の3つの亜領野(無顆粒性島皮質、不全顆粒性島皮質、顆粒性島皮質)を同定した。3つの亜領野にそれぞれ異なる蛍光タンパクを発現する狂犬病ウイルスベクターを注入し、灌流固定後、脳を採取した。実体蛍光顕微鏡で脳を観察した結果、3種類の蛍光ラベルが観察された。一部重複していたが、それぞれ注入部位ごとにラベルされた脳領域の相違がみられた。これは島皮質が領域ごとに異なる入力様式を持つことを示している。今後は組織標本の解析をすすめ、より詳細なラベルニューロンの分布様式の比較をおこなう。 本研究により得られる解剖学的知見は、生理学的研究や脳機能イメージングなどによる島皮質の研究にも極めて有用であると考えられ、摂食、情動報酬系などの多種多様な行動の制御に関与し多様な機能を持つ島皮質の情報処理様式の解明に大きく貢献できると考えられる。さらに、島皮質は精神神経疾患への関連性が示唆されていることから、本研究による島皮質の入出力様式の解明は、これらの精神疾患の病態解明や治療法の開発などにもつながると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
所属先の変更によって当該研究への取り組み開始に遅れが生じた。 島皮質は他の大脳皮質に比べ深部にあり、島皮質の亜領野への限局的な注入を成功させるためには、注入実験の方法をこれまで以上の精度でおこなう必要があることが分かった。脳のMRI画像の撮像プロトコル、注入実験の条件、麻酔方法の検討が必要不可欠となったため、注入実験への取りかかりに遅れが生じた。また、本研究ではこれまでマーモセットに注入したことがない狂犬病ウイルスベクターを使用しており、目的のニューロンラベルを得るための適切な生存期間に関しても検討を開始し、現在進行中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の注入実験によって得られたウイルスベクター注入個体の組織標本作製および解析をすすめる。特に島皮質へ多シナプス的に入力する大脳基底核(線条体、淡蒼球、視床下核、黒質)および小脳における逆行性越シナプス的にラベルされたニューロンの分布に着目し、島皮質の入力系について明らかにする。 アデノ随伴ウイルスベクターを島皮質に注入し、順行性トレーシングをおこなうことによって島皮質の出力様式の詳細を明らかにする。MRIや注入実験の方法については、これまでに研究代表者がおこなったマーモセット帯状皮質へのアデノ随伴ウイルスベクターの注入実験や、当該研究の2018年度におこなった島皮質への狂犬病ウイルスベクター実験を参考に実施し、必要に応じて随時検討および改良をおこなう。得られた注入個体の組織標本を作製し、島皮質から順行性標識された軸索終末の分布を全脳に渡り解析することで、島皮質の出力先を総じて明らかにするとともに、主要な出力先を特定する。アデノ随伴ウイルスベクターによる順行性トレーシングのみでは不十分な場合は、島皮質からの出力を受ける領域に、異なる蛍光タンパクを発現する伝播能欠損型(G遺伝子欠損)の狂犬病ウイルスベクターベクターを注入し、島皮質における逆行性ラベルされた出力ニューロンの細胞分布を解析することによって、島皮質亜領野ごとの出力様式の詳細を明らかにする。 上記の実験から島皮質の入力および出力について総合的に考察し、霊長類島皮質の機能マップを作成する。得られた研究成果については学会発表および論文の作成をおこなう。
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Causes of Carryover |
計画時の精算と実績の支出に差異が生じているが金額として少額であり、次年度の物品購入に充当する予定である。
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