2018 Fiscal Year Research-status Report
可塑的に再編された運動野興奮性・抑制性ネットワークの描出
Project/Area Number |
18K14844
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
孫 在隣 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 特別研究員 (40780333)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 運動野 / 学習 / シナプス可塑性 / 興奮性シナプス / 抑制性シナプス / ATUM-SEM法 |
Outline of Annual Research Achievements |
大脳皮質は興奮性の錐体細胞と抑制性の非錐体細胞とが複雑な回路を形成し、運動や感覚といった多様な機能を司る。この神経回路は可塑的変化をみせ、学習によるリモデリングの結果、錐体細胞では棘突起の新生・消失といった形態変化が観察される。第一次運動野(primary motor cortex, M1)は大脳皮質からの最終的な運動指令の出力を担う領域である。運動学習はM1において神経回路の再編を引き起こすことが先行研究により示唆されている。この再編された興奮性・抑制性神経回路を描出するため、運動学習により変化したM1のニューロン上の棘突起を取り巻く線維連絡を詳細に観察している。 運動野第5層錐体細胞が蛍光標識された遺伝子改変マウスに前肢を用いた運動学習課題を課し、2光子励起顕微鏡下で棘突起の動態を観察した。それにより、学習前後で棘突起の新生・消失が観察された。この学習に伴い新生した棘突起へシナプス入力する軸索線維の由来を辿るため、同じ脳標本を薄切し、免疫組織化学を施した。これを共焦点レーザー顕微鏡下で観察し、新生棘突起に存在するシナプス構造の持つ組織化学的特性を調べている。まずは興奮性入力の観察を行うと、学習に伴い新生した棘突起には早期からシナプス後構造にみられる蛋白質の免疫活性が確認された。今後は抑制性シナプスの出現を確認していく予定である。 また、連続超薄切片自動テープ回収装置 (ATUM)により回収された連続超薄切標本を走査型電子顕微鏡(SEM)で3次元的に観察を行うことで、この新生曲突起に対称性シナプスが存在するかを確認している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
光学顕微鏡解析は順調に進められている。電子顕微鏡での観察が非常に時間がかかり、また機器トラブル等のためしばしば撮影を中断せざるを得ない状況があるが、現在その効率化を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
興奮性・抑制性シナプスの可塑的変化を捉えるため、サンプル数を増やしていく予定である。また、鮮明な電子顕微鏡像の取得のため、組織処理条件の検討を進め、また超薄切切片の厚み削減のための超音波ダイヤモンドナイフの試用などを行っていく。電子顕微鏡画像から3次元構造を再構築し、新生シナプスを形成する軸索の動態について検証する。
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Causes of Carryover |
当初の計画案を進めるにあたり、電子顕微鏡解析を付け加えることでより詳細な解析を加えることが可能であると思い至った。ただし、電子顕微鏡観察は1標本の撮影のみで数ヶ月かかることが判明し、機器のトラブル等もあって解析に至るまでの時間が膨大となっている。撮影にかかりきりになるため学会発表への参加も見送った。次年度は電子顕微鏡観察の効率化に取り組み、学会発表、論文発表も行いたいと考えている。
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Research Products
(5 results)